神童と天馬(♀化)
2011/12/30 16:32


「やっぱり止めましょう、神童さん」

そう天馬は言った。外には追っ手がいるから声は張れないが、それでも良く通る鈴のような高い声。

「私、神童さんとなら絶対なんとかなるって思ってた。でも、貴方まで危険に晒したくないんです。」

その声が、今は酷く震えている。
天馬は俺と目を合わせようとしないで、声だけじゃなく足も震えて竦んでいるようだった。

「天馬…どうする気だ…?」

嫌な予感しかしなかった。こいつはいつだってひとりで俺の前を歩く。
こいつがどこかへ行くような気がして俺はその腕に手を伸ばしたが、軽やかに交わされてしまった。

「…大丈夫、なんとかなります。神童さんの幸せは私が守ります。」

にこり、微笑んで天馬は漸くこちらを見た、ガラス玉みたいに綺麗な目を濡らして。

「駄目だ、天馬、行くな、」

俺の目からも涙が垂れた。目の前の霞む天馬に手を伸ばすと、その手は天馬によって握られた。

「行きましょう、神童さん」

そういって天馬はぐいと力を込めて俺を引っ張った。
最後に天馬は言った。

「私が男の人だったらなぁ…神童さんと結婚出来なくてもずっとそばにいるくらいは出来たのに。」




天馬は追っ手に向けて叫ぶと、俺を追っ手に引き渡した。天馬もまた追っ手に捕らえられた。それきり俺は二度と天馬と会うことはなかった。数日後、俺は親が決めた財閥の娘と婚約し、一年後にはその人と結婚した。




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明治くらいの設定で書き始めて何も生かされなかった
有力財閥の御曹司神童と平民天馬です。本当は財閥の娘が茜で、最後ハッピーエンドの予定で長々書くつもりだったんですが、書き出しが浮かばなくてこっちに




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