なんか、おかしいんだよな、と、霧野がアイスをかじりながら言った。カップアイスを食べていた俺は、スプーンでアイスを掬い、なにが、と、返す。アイスを口に運ぶと、甘いバニラの味が口いっぱいに広がった。

「俺さ、ずっと前から神童のこと、好きだったんだと思う」

いきなりそんなことを言われて、何一つ構えてなかった俺は思わず噎せてしまった。いきなり何、と聞き返すと、別に、と返してくる霧野。別に、じゃないだろう。

「急だな、本当に」

「ふと思ったんだよ。俺っていつから神童のこと、好きだったんだろうって」

「それで?」

「たぶん、初めて会ったときから、好きだったんだと思う」

初めて会ったとき、と言えば、もう随分昔の話だ。それに俺たちはまだ幼かった、なのに、霧野はそんなに昔から俺の事が好きだったんだろうか。そう思うと変に照れ臭くなって、誤魔化すかのようにアイスを一口食べる。霧野は、そんな俺を見て少しだけ笑った。

「神童は?」

「え?」

「神童はどうなの、俺のこと、いつから好きだった?」

聞かれて、手を止める。俺は一体いつから霧野が好きなんだろうか。考えても考えてもいつから好きだったのかなんて解らなくて、霧野に対する好きが恋愛感情に変わったのは、いつのことだったんだろうか。

「…俺もたぶん、初めて会ったときから、霧野のことが好きだったんだと思う」

ぽつり、呟くように言えば、霧野は何故か満足気に笑った。