あああ!全く分かってない!!
分かる?神童!!
「?」を浮かばせてるだろ!!
分からないものに分かるとか言わないの!!

「蘭丸ー」
「…なに?」

にへら、と神童が笑う。
…こいつ、酒で酔ってるのか?
顔真っ赤だし酒っぽい匂いがする。
でも、いつもの神童は「霧野」って呼ぶし、まず、この状態も有り得ない。

「まず神童、この状態なんだよ。」
「?なにが、」
「いや、何がじゃないし。」

なんで俺、押し倒されてんの?
もしかして俺、誘われてる?
そう聞くと「誘われてる?」とか聞き返してきた。
…どんだけ鈍感なんだよ。
と、いうかこいつ、どんだけ恋愛用語わからないんだよ…。
というか、押し倒すなら好きな子押し倒せよ…。

「…神童、どいて。」
「なんで?」
「俺が身動きとれない、」

俺は冷静に応えた。
まず、この状況はヤバい。
俺の理性保たない。
神童は頬を膨らませて、むすっとしながらも俺からどいた。

「えらいえらい。」

そう言って俺は神童の頭を撫でる。
すると神童は猫のようにゴロゴロとしてくる。
…なんだこの天然記念物。可愛いすぎるだろ。
絶対に誘われてる。俺。
いやいや!でも神童は酔ってる(かはわからないけど)んだぞ?!
そんなこと出来ない、無理やりと同じじゃないか!

そう考えてると、神童が抱きついてくる。

「しんど…!」

俺は神童を引き離そうとしたが、小さくすすり泣きする声がした。
なんなんだよ!と思って神童の顔を見ると、涙が頬を伝っている。

…泣いている。

「神童、」
「…俺は、キャプテン失、格なんだ…」
「…」
「蘭丸、ごめん…俺は誰も守れない…俺は誰も…」
「神童」


俺は神童を抱きしめた。

「…なにが、キャプテン失格だよ…」
「らんま、る」
「俺は知ってる。神童がどれだけ頑張っているか。どれだけ神童が抱えているか。」

誰も守れない、がなんだ。
お前は責任感強すぎだ。
お前には俺がついていてやるから。
だから安心してくれ。
神童、お前は独りじゃない。

俺がそういうと神童は天使のように笑い、目を閉じた。





「…で」

あれから小一時間、俺の腕の中で神童は眠っている。
…早く起きろよ!!
ちくしょう…保て!理性!頑張れ!俺の理性!!!