親友だと、凄く大切な“幼馴染み”だと思ってる。一緒にサッカーして、遊んで。
でも俺は、神童の本当の感情を知るよしもなかった。


「霧野、話があるんだ」

「話?」

ある日の誰もいない部室で、ことは起きた。何時にもなく真剣な眼差しと口調で話す神童に鞄にユニフォームを直していた手を止め、離し、中腰で居た姿勢を元に戻せば神童を見つめる。何かあったのかと緊張感が漂う。戸惑いがあるのか間が開く。神童、と名前を呼べば、手を強く握り覚悟した様に神童の口から言葉が出た。

「俺は…霧野が好きだ」

耳に入った言葉に訳が分からない。親友で幼なじみとしての意味としてはあまりにも真剣過ぎた。しかし真に受けるのは無理で、冗談は止めろよ、と苦笑いし目を反らす。神童は何も言う気配が無い。

「………んで、」

「神童…?」

「…いや、何でもない。冗談に決まってるだろ、冗談」

やっと口を開いたが最初の言葉だけは小さく聞こえかった。言葉を聞き直そうとしたが、冗談だと言われてホッとしている自分は何故だが聞き直せなかった。
あんな真剣な口調と眼差しで告白されれば本気だと間違えてしまう。心臓に悪いから止めてくれ…。
もし、あの告白が本物であり、恋愛感情で好きと言われていたら、俺はどう応えたんだろうか。

「俺達は、幼なじみだから、な…」

幼なじみで親友であって性別は同じく男。神童を恋愛感情でみたことなんて一度もない。やはり断るのが当然。でも、この関係を崩れていくとすれば嫌だ。考えれば考えるほどにぐちゃぐちゃになりそうで、考えるのを止めた。冗談を真面目に考えるのも嫌気がさす。
それに俺にとって神童は只の幼なじみなのだから。