「ん、と…いいんですか、あれ?」

「気にするな。」


気にしたら負けだ。三国は溜息を尽きながらそう言った。名前はどこか腑に落ちない感じだが、まぁいいか。と楽観的に解釈するのだった。


「えっと、次は…霧野先輩!マサキくん!どうぞっ!」


名前が二人に渡したのは薄い青色の包みだった。


「ありがとうな、名前」

「まぁ…まっまずくなかったら食ってやるよ」


蘭丸は素直に包みを受け取り、マサキは悪態をつきながら包みを受け取る。そんな狩屋を見て、蘭丸ははぁっと溜息をつく。


「狩屋、お前またそんな言い方を…嬉しいなら素直に喜べばいいだろ」

「きっ霧野先輩には関係ないでしょ!」


蘭丸に図星をつかれたマサキは顔を真っ赤にしながら反論しだし、そっぽを向く。だが、名前から貰った包みを見て、隠れながらもどこか嬉しそうに笑みを浮かべていた。そんなマサキを見ていた蘭丸と名前は互いに顔を見合わせてクスクス笑うのだった。


「本当、素直じゃないな、アイツ」

「ふふっ、そうですね。けど、喜んで貰えて本当良かったです!」


どこか幸せそうな笑みを浮かべる名前に蘭丸は少し胸を高らならせた。そして少し考える。他のメンバーが色々とアプローチをかけているというのに、俺は何もしなくていいのか?今邪魔物が少ないこの時はチャンスではないのか?っと。その考えの元、蘭丸はある行動に出るのだった。


「名前」

「はい?っ、へっ…え?」


名前を呼ばれて振り返る。すると近くには蘭丸の整った顔がそこにはあった。せっ先輩?っと顔を赤くしながら戸惑った声を出す名前に蘭丸はクスッと笑いながら名前の前髪を掻き分けて、おでこにキスを一つ落とす。その際、蘭丸は名前の手をギュッと握る。


「お礼、なんて、な」

「ききっきり、のせんぱっ…あっ…」


名前は先程自分が握られた手の中にあるものがおさめられた事に気がついた。ふと手の中を見る。そして、そこにあったのは一つの飴玉。


「こ、これ…」

「みんなには内緒だぞ?ほらっ早く渡してない奴らに渡しにいってやれ」

「はっ、はい!ありがとうございます…霧野先輩…!」


名前は嬉しそうな笑みを浮かべながらもらった飴玉を握り締めた。そんな姿を蘭丸は愛おしそうに見守るのだった。

その後、つぎに名前は剣城の元へと向かった。


「京介くん、あの、これ…貰ってくれる?」


名前が剣城に渡したのは赤色の包みだった。名前はそれを大事そうに剣城に手渡した


「ありがとうな、兄さんと一緒に食べるよ。」

「あっ…ゆっ優一さんにはもう渡してるから京介くんが全部食べてくれたら、嬉しい、な」


名前は満面の笑みを向けながら言った。それを見た剣城は一気に顔を赤らめるのだった。


「わっ、分かった。大事に食べる」

「うんっ!」


名前はまた嬉しそうな顔をする。その度に剣城は胸にジクジクと痛みを感じていた。


「あ、あのよ…名前」

「ん?」

「今度また…お礼するから…今度の休み空けといてくれないか?」


剣城は顔を少し赤らめながら名前にお礼という名のデートの約束を取り付ける。そんなデートのデの字もよく分かっていない名前はただ嬉しそうにわかった!っと返事をするのだった。


そして、ちょうど剣城にも渡し終えた頃、信助たちに何かし終えた拓人たちが戻ってきた。

名前は何をしてきたの?などとも聞かなかった。触らぬ神に祟り無し。といったところだろう。


「天馬くん!」


まるでお疲れ様!などと言うかのように名前は天馬に近づく


「名前、あっ、えと…」

「ふふっ、はいっこれっ!」


いきなり自身の前に来た名前に天馬は必要以上に慌てたのだった。名前はそんな事など何も気にしない様子で、天馬にオレンジ色の包みを渡した。


「あ、ありがとう…名前!」

「えぁ、うっうん…!」


天馬は名前の手をぎゅぅっと握りながら顔を近づける。あまりの近さに名前は少しずつ後退る。


「てっ天馬くん、あっあの…」


近くない?そう言おうとした瞬間だ。名前はこつんっと誰かにぶつかる。誰に当たったのだろうと後ろを振り向けば、ニコニコと恐ろしい程の笑みを浮かべる拓人の姿があった。


「天馬、その手を離せ」

「あっ、お兄ちゃん」

「チッ…キャプテン!少しは自重してください!!」

「なにが自重だ!なにが!」


ギラギラと睨みあう二人の間に挟まれ続ける名前は何がなんだか分からないようだった。


「あの、二人とも?」


困惑の声を上げる名前に二人は気付くと、何も言わずにその場を納めた。

天馬は名前の片方の手を自身口元に持って行き、ありがとうと言いながら手の甲に一つキスを落とし、名前から離れた。そのときの表情はどこか大人びたような雰囲気で、いつもの元気で天真爛漫さのカケラもなかった。


「っ…て、天馬くっ…」

「美味しく頂くね!」


天馬は先程の行為に一切取り払うようないつもの明るい笑みを浮かべる。まるで先程とは別人にも思える雰囲気だった。


「くっ、天馬!お前っ!」


拓人はまるで殺し屋か何かと勘違いしそうな目で天馬を睨みつけた。その表情は名前からは見えない。しかし、その兄の声にビクッと肩を上げる。


「お、お兄ちゃん…」


喧嘩はダメだよ?などと思わすような声で名前は拓人の名前を言う。その声を聞いた瞬間、拓人は仕方なく行動を止めるのだった。


「…すまない。」


そうだ、相手は名前だ。どこかにキスをされようと、抱きしめられようと、恥ずかしがるが、相手が自分に向ける感情を悟れる妹ではないのだ。所詮鈍感という事だ。

拓人はまるで自分を安心させるかのように言い聞かせ、心の中で妹を思うのだった。所詮極度のシスコンだ。


「もう、今日はどうしちゃったの?」

「いや、気にするな。大丈夫だ」


拓人は名前に変に思われないように優しい笑みを向ける。名前はいつもの兄の姿を見て落ち着いたのか、そっか!っと笑みを浮かべた。本当に彼女は鈍感に加えて少し抜けている。っと周りの者は思うのだった。(まぁ、そこが可愛いんだけど!)


「あっ、お兄ちゃんにも渡さないと!はっ、はい、拓人お兄ちゃん…頑張って作ったの。たっ食べてくれる?」

「あぁ、勿論だ。ありがとうな」


名前はピンク色の包みを拓人に渡す。受けとった拓人は名前の頭を優しく撫でた。すると名前は嬉しそうに、そして幸せそうに笑うのだ。


兄に褒められた。兄に喜んで貰えた。それだけで妹は嬉しく思える生き物なのだと再認識する場面。傍からみれば、どこぞのカップルである。だがこの場合は兄妹だから成せるものなのだろうと、全員無理矢理自分たちの中で思わせるのだった。


「あと、監督たちにも作ったんです!貰ってくれますか?」


拓人から離れた名前は次に監督である円堂や明、鬼道、春奈の元へと駆け寄る。


「おっ!俺達にもくれるのか!」

「円堂監督たちにはいつもお世話になってますから、当たり前です!」

「すまないな、有り難く頂く」

「名前さんありがとうっ!」


名前は包みを円堂、鬼道、春奈に渡す。春奈はあまりの嬉しさに名前をぎゅぅっと抱きしめた。円堂や鬼道はこの春奈の行動にどこか思い当たる節があるのか、苦笑いを浮かべたり、溜息をつくのだった。そして、春奈から解放された名前はすぐ明の目の前にたった。


「あっ明監督っ!ああああああのっ!こっこれ貰って下さい!」


名前が明に手渡したのは明らかに他の者とは違う包み…というよりも箱だった。まるでこれが本命です!っと言わんばかりのものである。


「私に?」

「はいっ!明監督に貰って頂きたいんです…その…明監督は…私の…っ」

「名前ちゃん?」


まるで今から告白するかのような雰囲気と名前の真っ赤な顔に誰もが焦りを見せた。そんな、ダメだ!しかし声をかけようにもあまりの雰囲気に声をかけられない。喉まで出てくる言葉もすくさま飲み込まれる。そして、その雰囲気を壊すのは、作りだした張本人の名前だった


「私の、一番憧れてる人ですから!」


名前の言葉に部員全員が頭を痛めた。あまりにも彼女の思わせぶりな言動が原因であろう。


「名前ちゃん…。なっなんだか照れるな…!…ありがとうね」

「は、はいっ!」


名前は今までの中で一番嬉しそうな顔をするのだった。彼女にとって憧れの人に褒めてもらえるのはそれほど嬉しい事なのだった。


そして、今日という長いようで短い雷門サッカー部の激闘は一時休戦となったのだった。


【お届けします!】
みんなに、私のこの気持ちを
(次は君の所にも)
(渡しに行くかも!)
(なんて、ね)

END

ルナ様リクエストありがとうございました!本当に遅れてしまって申し訳ありません…!

逆ハーになってますでしょうか?というか完全にVDネタ…いや、VDとは言ってないのでVDではありません!!←
…すみません。完全にVDです。自分に向かって季節外れも甚だしいぞと叫びたい気分です…。しかも最後は完全に明落ちですね…。それに完全にGOキャラが中心でしたね、もう少し無印キャラも出せたら良かったのですが…本当に申し訳ないです。ご期待にそえていれば本当に嬉しいです!

2012.3.2 夢桜

「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -