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「何やってんだよい馬鹿」
「…るせぇ阿呆」


騒ぎは意外と早くおさまったようだった。船内は落ち着きを取り戻し、今は各々自室で休憩を取っている。
……俺はというと傷の手当のために医務室のベッドにくくりつけられていたが。
そして何故か、横にはあからさまに機嫌の悪いマルコが座っていた。

手当は既に完了していたが、傷を縫い合わせる為打たれた麻酔が俺の言葉と行動を制限する。おかげで悪態をつくマルコに思うように反論できず、もどかしさでいっぱいだった。


「死ななかったからよかったものの、こんな致命傷になりかねない場所を切られるなんてどうかしてるよい」
「つけたくてつけた傷じゃねぇ」
「当たり前だ、もっと周りを見ろ油断してんじゃねぇ。隙を見せたら終わりだろい…!」
「っるせぇな!」


ダンッ!!


次々に吐き出される悪態についに頭にきた俺は、麻酔の効果を跳ね退け勢いよく起き上がると気がついた時にはマルコの頬を思い切り殴っていた。しかしそこは不死鳥マルコ。頬に触れた筈の右腕は遠心力に振られて空をかき、マルコの顔の左半分は青い炎と化していた。そのせいで表情はいまいち読み取れない。


「…っ!なんなんだよお前…!」


刃でも銃弾でも簡単に命を落としかねない俺。どんな攻撃でも受ければ必ず再生する不死身のお前。口にしたものひとつで、こんなにも差ができてしまうものなのか。
同時期にこの船に乗って、同じように努力して、一緒に戦ってきたじゃないか。なんならお前が悪魔の実を食べる前までは、体格のでかかった俺の方が強かったんだ。
それなのに、なんで――


「そうだよなお前は切られようが打たれようが関係ねぇもんな…!」
「それとこれとは話が」
「違わねぇよ!結局この世界は生きるか死ぬかなんだ。死んだら負けのこの世界で、死なねぇお前は勝者ってわけだ!よかったな便利な身体になれてよ!」
「…っ、」
「どうせ俺はただの人間だ。お前なんかに俺の気持ちがわかってたまるか…!」


怒りのあまり言葉は溢れるように飛び出して来て、途中からは制御ができなかった。俺の言葉にマルコが機嫌を悪くして、眉間に皺が寄せられる様にいい気味だと笑った自分がいた。
しかし大声を張り上げたせいで不足した酸素に、目の前がくらくらとする。これは耐えられない、と正直に枕に頭を預けてマルコに背を向けると、後ろで立ち上がる音がした。


「……そうかい。わかった」


怒りで頭は沸騰してるし、酸欠で視界は霞むのに、何が、なんて聞く余裕はもちろんなかった。目を閉じて一度深呼吸している間に、木製の扉が開き、マルコが出ていく音がした。


「……あんなやつ、」


続ける言葉が見当たらず小さく呟いた言葉は、空中をさ迷うと静かに消えた。胸の中ではなんともいえないもやもやした感情が渦巻いていた。
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