main_向日葵荘物語 | ナノ
向日葵荘に入居して3日。俺の歓迎会を兼ねて亮の部屋で鍋パをしようという企画が持ち上がった。参加者は大学が忙しい侑士とバイトで来れない白石を除いたこのアパートの住人全員。珍しく帰宅していた千歳も参加だ。
6畳の狭い部屋にこたつとローテーブルを並べて、大の男が7人ぎゅうぎゅうと身を寄せている様子はなんとも暑苦しい。しかも用意された鍋は一つだからその中身の減りはめちゃくちゃ早くて、もはや争奪戦状態だった。そうなると主役だからとお誕生日席に座らされた俺はものすごく不利なわけで、横取りしてくるジローや図体のでかい千歳をうまくかわしながら具材にありつくしかなかった。


「ジロー!それ俺の肉!」
「え〜?もう食べちゃったC〜」
「見てみ!これが浪速のスピードスターのアツアツ白菜早食い技や!」
「アホちゃいますか」
「そんなに白菜が好きだったら、どうぞ」
「わっお前ら何すんだよ!」
「こぎゃん大勢で鍋するのは久しぶりたい。楽しかね」
「っだー!もう!!お前らちゃんと煮えてから食え!!」


亮が声を荒げる。謙也が大きな音を立てる。普通の集合住宅だったら絶対にアウトだ。まぁこんなふうに大人数が集まること自体が少ないから、盛り上がるのはしょうがないんだけど。

俺は箸を構えて中腰になった。亮が今投入している肉を次こそゲットするためだ。


「あはーがっくんやる気だね〜」
「おー、次は負けねぇよ」


隣の席でジローもまた臨戦態勢を整えている。いや、ジローだけじゃない。気がつけば亮を含めた全員が俺と同じような姿勢で獲物を狙っていた。


「おいおいあんだけ食ったのにまだ足りねぇのかよ。激ダサだな」
「お前らのせいで肉にありつけへんねん」
「次も下剋上だ」
「しっかり食わさせてもらいますわ」
「俺もそろそろ本気でいくばい」


鍋の底のほうからふつふつと気泡が上がってくる。敷き詰められた肉が赤から白へ変わっていく。謙也がばっと腕を上げた。


「よっしゃ、いくで!!」


俺は飛びかからん勢いで鍋に箸を突っ込んだ。



(豚バラ肉争奪戦)
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