マドレーヌと秘密 | ナノ
ロコの買い物は凄く長かった。けど、楽しかった・・・気がする。女の人の買い物が長いって本当だったんだ・・・と遊具のある屋上で休みながらそう思った。隣りでロコは、鞄の中をゴソゴソと何か探している様子。


「あ、あったあった。はい、どーぞ」


そう言って渡されたのは、前に貰ったことのあるマドレーヌ。ニコニコと笑って差し出すロコの掌からそれを取って食べた。ふわふわとしていてすごくおいしい。
自分で作ったんですか、と聞けばそうなるねー、と笑った。


「ドラマの撮影でさ、教えてもらってハマってね」

「・・・今度のですか」

「うん。・・・4日後には、違う場所で撮影だからもう会えないねー」


もそもそと食べていたマドレーヌをぼとりと落とした。それを見たロコは、あーあ、と声を上げて拾った。
・・・4日後には、会えなくなる?あまりにも驚きで、言葉が出てこなかった。ただ、一生懸命絞り出した言葉は、そうですか、たった一言だった。

それから、屋上の店で手軽なものを食べて帰ろう、と言って店を出た。ロコはこれから撮影だ。
じゃあね、と手を振り信号を渡ろうとするロコ。なぜか無意識に手が出て、ロコを引き留めていた。驚いた顔で俺を見て、どうしたの、と笑った。


「・・・しい、です」

「え?」

「寂しいです。もう、会えなくなるの」


じっと目を見れば、ニコリと微笑むように笑うロコ。じゃあ、明日も学校終わったら公園においでよ。私も行くから。そう言って、俺の頭を撫でる。その拍子にするりと俺の手からロコの手が離れて、ロコは信号を渡って行った。

・・・何言って、。

はあ、と自分の言ったことに何度も溜息を零しながら家に帰りついた。
ロコを掴んだ手が熱い。なんで、こんなに熱いんだろう。
掌をじっと見つめて、その手で部屋のドアを開けようとして、やめた。反対の手で開けて中に入った。


熱くて溶ける
(ドキドキ)(これって)(何て言うのかな)


0602