マドレーヌと秘密 | ナノ
学校が終わって、今日も一人で帰る。その途中で公園を見てみると、やっぱりロコがいて、ブランコをゆっくり漕いでいた。
どうも、と声を掛けに行く。あ、昨日の少年だ、と年齢に合わない笑顔を見せて、なんだか心が温まった。


「少年は今日も一人?」

「あ、はい」

「そっかー」


シーンと静まる。俺も隣のブランコに腰かけて、なんとなく空を見た。そんな時、そういえば少年の名前なんだっけ、と言った。たしかに、俺はロコの名前を知ってるけど、ロコは俺のこと少年って呼んでるなあ、とふと気づいた。
漕いでいたブランコを止めて、遠くの地面を見るとアリの行列があった。そのままそこから目を離さず俺は答える。


「浅羽・・・祐希、です」

「浅羽くんね」

「あ、でも、双子の兄がいるから祐希のほうが・・・」


今度はロコを見ていうと、混乱するわけか、と答えて分かったと頷いた。それから祐希くんと呼ばれて、温かくなった心が今度はどきりとはねた。なんだろう、これ。なんだかすごく・・・・・・どきどき、する。ぎゅ、と袖を握って、どきどきを誤魔化そうとしてみた。けど、全然だめで逆にもっとどきどきしはじめる。高校生って楽しい、とロコが突然言った。ああ、まあまあと答えるとそっかと返ってくる。それでまた静かになる。俺の心臓も。


「よし、祐希くん!」

「・・・はい」

「今度の日曜日、ここらへん案内してよ」


そう言って仁王立ちしたロコはジャンバーのポケットから携帯を取り出すと、アドレス交換ね、と笑った。この人、芸能人って自覚あるのかな。ほら早く、と急かされて俺も携帯を取り出してアドレスを交換した。
俺の電話帳に倉坂紘子という名前が追加された。


ひとつ増えた名前
(時間は、またメールで送るね)
(はあ・・・)
(出来たら祐希くん一人で案内がいいけど、まお兄さんならいてもいいかな)
(はあ・・・)


0316
実際、芸能人とアドレス交換なんて出来ないけどね!でも、いいんだ。だって、ロコは祐希みたいな子を信じてるんだから!