マドレーヌと秘密 | ナノ
「ただいまー」


部活が終わって帰ると、家には祐希しかいなくて、母さんは買い物らしい。
テレビを見ながら机に頭を預けて祐希はあのさ、と口を開く。なに、と返事をしながら俺も向かい側に座ってテレビを見た。バラエティ番組で、昨日公園で見かけたロコがゲストとして出ていた。それから祐希の次の言葉を待っていると、ロコが新しいドラマに出るんだって、と言った。きっと今でている番組で宣伝でもしたんだろうなぁ、と思いながらそうなんだと言う。


「・・・今日もロコに会った」

「え、そうなの」

「うん。近くで撮影があるみたい。ドラマのかな」


ドラマが始まるならそうなんだろうね、と言うと祐希はそっかと言って無言になった。
それからすぐに母さんが帰ってきて夕飯の支度をはじめて、いい匂いがしはじめる。俺は盛り付けられたお皿を運ぶ。祐希を呼べば、テレビを消して席についた。
父さんも帰ってきて、夕飯を食べ終えると祐希は先にお風呂に入ってすぐにベッドに潜り込んだ。珍しく今日は早く寝るみたいで、どうしたんだろうと心配になったけど、ベッドの中で漫画を読み始める祐希を見て、なんだ普通か、と安心して俺も少し勉強をしたあとにベッドに入った。

朝、目が覚めるといつも目覚めが悪い祐希が俺よりも早く起きていた。俺より早いなんて、と兄として心配になったけど、これはこれで祐希が成長したからいいことなんだろうな、と弟の成長に少し寂しくなったけど祝福をした。


「おはよう、祐希」

「あ、おはよう」

「早いけどどうしたの」

「・・・別に何にも。目が覚めただけ、」


それからいつものように顔洗って朝ごはんを食べて歯磨きして・・・、いつもより少し早めに家を出た。
犬の散歩をする人達やランニングをする人、学校に向かう生徒たちがちらほらといる。前から、帽子を被ってランニングをする人が俺たちの横を通りすぎた時、祐希が微かに声を出した気がした。横を見れば、足を止めてすれ違ったその人を見ている祐希がいた。



様子がおかしい理由
(さっきの人がどうしたの)
(いや、マーマレードの匂いがしたから)
(祐希マーマレード好きだっけ)
(・・・最近好きになった)


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