マドレーヌと秘密 | ナノ
どうして泣くのか分からなくて、茫然と立つしか出来なかった。何度も何度も目を拭っているけど、それでも溢れる涙を流す目で俺を見たロコは、もう一度無責任すぎるよ、と震える声で言う。そっと握っていた手を離して、ごめんなさい、ともう一度謝る。けど、その涙は止まらなくて、今度は嗚咽までもが聞こえてきて、どんどん俺の胸が痛む。


「そんな、の、なかった・・・こ、とに・・・っ」

「そっちの方がいいんじゃないんですか?」

「誰も、そんなこと言ってない・・・!」


じゃあ、どういうことですか。なかなか言ってくれないロコに俺がイライラしてきて、ついあたるような言い方をした。ビクリと肩を震わせるロコに、自分が悪いのに、と思ってまた罪悪感が増していく。そっと手を伸ばせば、ぎゅっと目を瞑ったロコを見て、俺のことを怖がっているっていうのがすぐに分かって手を引っ込めた。行き場のない手を握りしめて。


「勝手だよ、勝手にキスして謝って勘違いして、私は・・・っ」

「・・・」

「私は、私のこの気持ちはどうしたらいいの・・・!祐希くんが、好きっな、のに・・・っ」

「・・・え、」


ロコの言葉にドクリと心臓が鳴る。気持ちが抑えきれなくなって、気がつけば抱き締めていた。俺だって、好きです。と告げていた。弱々しい声で嘘だと言うロコに、嘘じゃないです、と力を強くした。


僕と彼女と秘密


「じゃあ、二人で勘違いしてたんだね・・・」


へへ、と笑うロコの目は赤く腫れていた。戻ったら怒られちゃうな、と困った顔をするから、俺が買ったジュースをそっと目に当ててあげると、冷たいと言って逃げたけど、笑ってありがとうと言って受け取った。


「なかなか会えなくなるけど、メールするね」

「はい」

「祐希くんからも頂戴よ?」

「・・・出来るだけ」


言うと思った、と笑う。耐えきれなくて、また抱き締める。耳元で、寂しいです、と言えば私も、と言われた。でも大丈夫、と言って笑うロコが不思議だ。祐希くんと私だもん、と言うロコの言葉を知るのはもうちょっと後のことだ。





【今、大人気アナウンサーとロケ中!】

【男ですか】

【そうだよ。妬いてる?】

【妬いてます】



【大丈夫、祐希くんだけが好きだから】


【俺もです】



0908
最後のはメールの内容です。空メが送られて来たと思ったら、下の方に妬いてる、て書いてあるといいと思います(笑)
長い間お付き合い頂きありがとうございました。途中何度も断念しました。凍結も考えました。でも、なんとか終わらせることが出来たので良かったです。