マドレーヌと秘密 | ナノ
いつもの公園で待ってます。
ロコにそのメールを送って1時間も経つけど全然返事が来なかった。だけど、もう少しもう少ししたら、と思ってなかなか離れられない。俺が悪いことしたのは分かってるし、それぐらいされても文句言えない。はあ、と冷たくなった手に息を吹きかけるとじんわりと温かくなる。もう、帰ろうかなぁ・・・。そう思ってた時に悠太たちが通った。


「・・・まだ帰ってなかったの?」

「うん。でももう帰る」


ブランコが俺が退いたことによって小さく揺れる。まだ、明日がある。大丈夫。そう言ってもう一度手に息を吹きかけた。千鶴がやたらと何であそこにいたかを聞いてきてるけど、無視しよう。聞かれて答えていいのかも分からないし、第一千鶴は言ったらうるさくなるから。すると、あ、と思い出したように千鶴が声を上げた。


「さっきゆうたんにも言ったんだけどさ、ゆっきーも明日ロコちゃんの現場行くでしょ?」

「・・・明日?」

「そうそう!明後日ロコちゃんのドラマの撮影終わるんだって。だから」


行く?ともう一度言った千鶴に、まあ、と返した。・・・明後日。未だに着信の知らせが来ない携帯を握りしめた。明日話せるんだったら、話したい。それで、・・・・・・それで?それで俺は何を言うんだろう、。何て言う?好き、って言うの?・・・でも、まだそれが好きかなんて分からない。ぎゅう、とより一層携帯を握りしめた後にポケットにしまって、いつものように悠太に抱き着いた。

家に帰ればいい匂いがしてきて、もう夕飯なんだと思わされた。帰ってすぐに手を洗って、お母さんの手伝いをする。相変わらず父さんはそこらへんに寝そべっている。夕飯が机の上に並ぶとみんなで机を囲んで食べ始めた。食べ終わればお風呂を済ませる父さん。そのあとに悠太が入って、次は俺が入った。
体が冷えていたせいかお湯が痛かったけど、すぐに気持ちよくなる。髪の毛をきちんと乾かさずにリビングに出ると、ちょうど今からロコのドラマが始まるらしい。離したくない、と有名な俳優がロコを抱きしめて、それを見るとズキズキと胸が痛くて、締め付けられて・・・。・・・これ、何ていうんだろう。





「・・・ゆうた」


寝るころになって、二段ベッドの上にいる悠太に呼び掛けるとどうしたの、と声だけが返ってくる。悠太は、好きって分かる?と聞いた俺にクスクスと小さな笑い声が届いた。何で笑うの。


「その人を、自分が幸せにしたいって思ったら、もうそれは好きなんじゃないのかな」

「・・・その人が他の人といて見るだけで苦しくなるのは?」

「一緒のことだよ。結局は、自分がその人の傍にいたいって思うからそんな気持ちになるんでしょ?」


目を瞑ってみて、って悠太に言われて素直に目を閉じた。祐希には誰が見える?と聞かれて見えるわけないじゃん、目瞑ってるのに。そう答えようとした途端、ロコの笑顔だ。キスしたあとのあの悲しい顔が映った時は、ズキンと痛くなる胸。ドラマのラブシーンを見たら、きゅうっと苦しくなる。・・・これが、好き?


ほら見えたでしょ?
(分かった?)
(・・・うん。ありがとう悠太)
(いいよ。祐希を成長させるのはお兄ちゃんの役目ですから)
(なにそれ。ちょっとだけじゃん)

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