走れ青春 | ナノ
重たい扉がギギ、と音を鳴らしながら開かれる。遅えぞ、と開けた途端声が聞こえて、明るい空の次に見えたのは、4組の三人。


「あれ、なんで松原もいるんだ?」

「僕らで誘ったんです!」

「ご、ごめんね…。邪魔しちゃって、」

「いや、別に邪魔じゃねえけど…」


塚原くんと喋るのは、高校1年のときの終業式が最後だったかな…と思っていると、松岡くんがここどうぞ、と言ったから、そこに座らせてもらった。座った途端、黄色い不思議な髪型の…橘くん、だったかな?その彼がいきなり手を握ってきた。


「お、おおお女の子!」

「ちょっと千鶴、迷惑なんだけど」

「だ、だだだってよ、ゆっきー!やっと女の子を…!」


え、この場合どうしたら…。あたふたとして、目が泳いでいる時、ふと近くの塚原くんと目が合ったものだから、助けてと目で言ってみた。案外それは通じたらしく、おいサルと塚原くんは橘くんを引き剥がしてくれた。


「おい、お前人のめいわ…」

「俺、4組の橘千鶴って言います!」

「人の話を聞け!」

「いった!要っち酷い!」


目の前で騒ぐ二人がコントみたいで、ついくすくすと笑っていると、ふと視線を感じた。見ていたのは浅羽悠太くんの方で、なんだか驚いたような感じの顔で見ていた。
なんか、私悪いことしちゃったのかな…。あ、もしかしたら笑うなんて失礼な奴だ、なんて思われちゃったのかな…。


「ご、ごめんなさい…、」

「…?香菜ちゃん、どうかしましたか?」

「ううん…、なんでもない」


小さな小さな後悔
(…で、貴方の名前を教えて下さい!)
(あ、うん。えと、松原香菜って言います…)
(香菜ちゃんかぁ、いい名前!これからよろしく!)
(サル、もう黙れ。うるせえ)

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