走れ青春 | ナノ
席替えをしたからなのか、浅羽くんの隣だからなのかは分からないけれど、今日の授業は前までより何倍も長く感じた気がする。早く日直の仕事を終えて、お弁当食べよう…。ゆっくりと黒板の文字を消していた手を、少しだけ早くした。


「春、屋上行こう」

「先行っててください。僕、日直に仕事があるので」

「え、いいよ松岡くん行って!私がしておくよ」

「そんなこと出来ません!香菜ちゃんに全部任せるなんて…」


松岡くんはとてもいい人です。中学生の時から、松岡くんたちとは同じ学校で、中学1年生のときから今まで、松岡くんとはずっと同じクラスだったからある程度は仲良しです。中学2年生の時に、松岡くんに春って呼んで下さいって言われたんだけど、恥ずかしくてそのまま呼べずにいるけど、それでも優しくしてくれる。


「じゃあ、俺手伝うよ」

「ほんとうですか。悠太くんありがとうございます!」

「黒板の高い場所届かないでしょ。俺が消すよ」


浅羽くんも、松岡くんと同じくらい良い人です。あんまり関わりはなかったけど、松岡くんが私に話しかけてくれる時は、ほとんど浅羽くんたちもいたから、ほんの少し話したくらい。でも、友達から話を聞く限り、中学の時より優しくなったらしいです。女子からの人気も余計に上がったとか…。


「で、でも…」

「いいよ。ほら、貸して」

「ごめんね…、」


私が一生懸命背伸びをしても届かなかった所を、浅羽くんは簡単に消した。こういうのを見ていると、背が高いって羨ましいなんて思う。私、160pぐらいだから、低い方だし、友達はみんな背高いし…。


「……日誌、終わりました!」

「じゃ、行こうか。…あ、松原さんも来る?」

「え、いや、いい…です」

「いいですね、それ!行きましょう、香菜ちゃん」


松岡くんは私の言葉が聞こえてなかったのか、にっこりと笑った。
……そんな笑顔見せられたら断れないよ。うん、と頷いてお弁当箱を持って二人の後ろを歩いた。まぁ、いっか。もう、みんな食べ終わってるから食べる人いなかったし…。

屋上への招待状
(いいのかな…。私がいても、)
(もちろんですよっ)
(人数も多い方がいいって言うしね)
(あ、うん…あり、がとう…)

1126