走れ青春 | ナノ
家に帰ってからも、ずっと祐希くんの言葉の意味を考えていた。
確かに席替えをするときは、また近くになったら…とかを考えたけど、それが好きなんて思えない。きっと、楽しかったから離れたくなかっただけだと思う。

自分に正直になってください

…自分に、正直に?
席替えが嫌だったのは、悠太くんと離れたくなかったから。悠太くんにマフィンがおいしいって言われてドキドキしたのは嬉しかったから。悠太くんの隣にいるとドキドキするのは緊張したから。全部そうやって考えていくと、急にドキドキしはじめて……、これが好き…なの?


そっか、これが好きってことなんだ…。




学校でクラスの子たちが話していた声が聞こえた。それは、悠太くんと高橋さんが別れたっていう話で、それが本当かは分からないけど、このドキドキは嬉しいのかもしれない。でも、好きってことが分かったのはいいんだけど、悠太くんの顔を見るたびに顔が熱くなりそうになる私は、朝や授業の合間とかに逃げてばかりで…。絶対変に思われてる…。

昼休みに自販機でジュースを買って、ガコンという落ちる音と一緒に溜息が出た。春にはキレイな桜が咲く、大きな木も、今は夏だから緑色の葉でいっぱい。


「…あ」


後ろで二つ声が重なって聞こえて、しかも聞いたことのあるような声。振り向くと悠太くんと祐希くんが立っていて、じっとこっちを見ていた。
どうしよう…。逃げようかな…、で、でも、そんなことしたら絶対嫌われちゃう…。


「……え、祐希何言ってんの」

「じゃあね、悠太」

「ちょっと…」


コソコソと祐希くんが悠太くんに何かを言ったみたいで、悠太くんは一瞬こっちを見てそのあと去っていく祐希くんを見た。なにを、言ったのかな…。変なことじゃなかったらいいんだけど…。
ドキドキとしていると、悠太くんはこっちに近づいてきた。


きみがくれたチャンス
(…松原さん)
(え、ぁ…は、はい)
(少しお話があります)
(…は、い)

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クライマックス間近です!