走れ青春 | ナノ
席替えをしなくても、結局前と変わらずにぼーっと窓の外を見ているだけで、ほんの少し変わったなんて言えば、ドキドキしなくなったことくらい。

ぼんやりと教科書を鞄に終いながら、前の席をちらりと見て教室を出て思ったことは、春くん以外の人とはあまり喋らなくなった。塚原くんや橘くんとは会った時は挨拶ぐらいはするけど、悠太くんと祐希くんに会うことなんてあんまりないし…、それに、悠太くんに話しかけるのは、高橋さんに悪い気がして…。

下駄箱のところに行くと、座り込んでいる二人組が見えた。悠太くんと高橋さんだ…。泣いている高橋さんの目元を触っている悠太くんがいて、それに頬を赤くする高橋さんがいて…、良い雰囲気を出している二人。

きゅ、と上靴が鳴って、私は急いでその場から踵を返した。


目が熱くなって、何かを堪えるように下唇を噛みしめた。


「いて」

「あ、ごめんなさ…っ」

「……松原さん、泣いてる」


ぶつかった相手は祐希くんで、私を見ると少しだけ驚いた顔をした。それで、祐希くんに言われた言葉は、泣いてるなんて言葉で自分でも驚いた。
泣いてるつもりなんてなかったのに。


「何かあったんですか」

「う、ううん…、なんにもないよ…」

「……」


少しだけ背を屈めて祐希くんは自分の指で私の涙を拭ってくれた。優しいな、なんて思うと余計に泣きたくなって、次から次へと涙が零れた。


ただ溢れ出てきた
(何が悲しいとか)(何で泣いてるのか)(分からないよ…っ)

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