走れ青春 | ナノ
よし、と目の前に広げたお菓子の材料を見た。それで思ったことが、結構前に安いからと買い溜めをした小麦粉たちが期限が明後日までだった。橘くんの一言がこの小麦粉たちを救ってくれて、お金の無駄遣いをしたという私の後悔も救ってくれた。きっと、今日作らなかったらもう作らないだろうし、たくさん作ろう。





昨日から一日経って今日。
いつもの鞄と少し大きなサブバック。意外にも小麦粉が多くて、たくさん作ってしまった。しかも、一応塚原くんたちのも作ったっていう…迷惑、だったかな…?
教室に着くと、すでに春くんたちは来ていて、私の席には祐希くんが座っていて、悠太くんは自分の席、春くんはその傍に立っていた。
……どうしよう。と、とりあえず、荷物はロッカーの中に入れようかな。ロッカーの中に荷物を入れて、もう一度自分の席に行くと春くんが私に気付いて手を振った。


「香菜ちゃん、おはようございます」

「お、おはよう」

「祐希、そこにいたら松原さんが座れないでしょ」

「……来ますか」

「え?」


祐希くんは退かずに自分の膝をポンポンと叩いた。え、来ますかって……え、うそ。一気に顔が熱くなって顔をぶんぶんと横に振った。

冗談でも結構恥ずかしいです、祐希くん…。


「…祐希」

「冗談だよ。あ、そうだ。悠太、国語辞典貸してよ」

「俺今日は持ってないよ」

「じゃあ、春は」

「すみません、僕も持ってないです」


すると祐希くんは私に視線を向けて来た。それはきっと国語辞典を持っているかということなんだと思う…。それは当たったみたいで、松原さんはと聞かれて持ってます、と答えてロッカーのもとへ行って国語辞典を貸した。


「ありがとうございます」

「あ、うん」


そこで、先生が来て祐希くんは春くんと悠太くんに手を振って私にも手を振ったあとに、ペコリと頭を下げて出て行った。
席に着いて、ホームルームが始まってすぐ、隣から視線を感じた気がした。けど、その隣とは悠太くんで、目を合わせることが出来ない私は気付かないフリをして窓から見える空をぼーっと見ていた。


その視線の先には
(松原さんはさ、)
(え、は、はい)
(…何でもないです)
(……)

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