Rainbow | ナノ
「…っごめんね、遅れ…て?」

「ああ。そいつのことは気にすんな」


いつもの屋上に行けば、昨日祐希くんと要くんのクラスに転入してきた男の子が倒れていた。要くんは気にしなくていいなんて言ってるけど、…いいのかな。躊躇いながら歩みを進めて悠太くんの隣に座った。今日も、茉咲ちゃんは春ちゃんに勉強を見てもらっていて、私とたまに目が合うとばつが悪そうに逸らした。私、嫌われるようなことしちゃったかな…なんて不安になっていると、寝ていた転入生が起き上がった。


「だあー!俺の青春終わっ…あ、あの!お名前伺ってもいいですか?!」

「だめ」

「ちょ!なんでゆっきーが答えるの!」


もう一度私に向き直ると、俺は橘千鶴です、と言った。だめと言いながら睨む視線を送ってくる祐希くんに笑って、鈴井杞紗です、と答えた。元気に私の名前を呼んで手を握るとぶんぶんと上下に勢いよく振り思い切りの笑顔でよろしくねと笑った。そっと握り替えして、よろしくね、ちーくん、と笑う。
仲良しさんですね、と笑った春ちゃんの隣りで茉咲ちゃんが何か言いたそうにもじもじしていて。


「どうしたんですか?茉咲ちゃん」

「え、あっ……わ、私も杞紗ちゃんって、呼んでもいい…?」

「いいよー!大歓迎、嬉しいっ」


ぎゅうっと小さな茉咲ちゃんを思い切り抱き締めれば、離してっ!と騒ぎ出す。照れ屋さんなのかな?あまり無理にしても嫌われるとイヤだから離れると、真っ赤な顔の茉咲ちゃんがいて。けれど、走って逃げてしまった。


「茉咲だけズルい…」

「祐希くんはいつもくっついてるのに?」

「そうだよ祐希。たまには俺に譲ってよ」

「…しょーがないなぁ」


あ、あれ?お話、変な方向に向いてない…?おいで、と手を広げる悠太くんに戸惑っていると、ちーくんが真っ先に飛び込んで行った。


空の下、雲が駆け抜ける
(キャー!ゆうたんったら大胆!)
(千鶴はお呼びじゃないよ)
(うわ!この子怖い!)
(…おいで、杞紗)

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