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神奈川からの転校生←←王子様白石

「俺、苗字さんが好きや…っ!」

帰ろうとしていたら、突然強く引かれた腕に足を止める他なく、振り返ればミルクティー色のキレイな髪の持ち主の彼が顔を赤くして言った。その言葉は、冒頭の台詞である。
目の前に立つ彼は、知らない人はいないだろうと言うほどの美形の持ち主、王子様の白石蔵ノ介君。私も人が噂しているのを聞いた話だけど、彼女がいたことがなく、テニスが上手で部長をしており、成績もよく、性格もよく、人望熱い人だと。
そんな彼が私に告白?有り得ない。彼のスペックと私のスペックはあきらかに違いすぎるじゃないか。王子様の彼と、数ヶ月前に転入してきた私。うん、やっぱり有り得ない。

「返事、くれへんか…?」
「…ごめんなさい」

やっぱり無理だと思う。遊ばれてるとしか思えないのは、きっと神奈川での思い出のせいかもしれないけど。
私の返事を聞いた白石君は悲しそうにふにゃりと微笑んで、俺のこと知らんから当たり前よな、と言った。そんな彼の表情を私が無視出来るわけなくて、友達からなら…と言ってしまった。ああ、私はなんてお人好しなの。

***

「おはよう、苗字さん」

彼、白石君に告白された翌日。朝にバッタリと白石君に会い、挨拶された。近くにいた金色君と一氏君が驚いた顔で私達を見る。

「何で白石と仲良うなっとるんや!」
「何や、蔵リンもう告白してもうたんか?」
「おん。せやけど友達から始めることになってなぁ」

眉尻を下げて微笑む白石君に、ぎょっと目を見開く一氏君は私の頭を叩いた。前から思ってたんだけど、一氏君って私と知り合ってから数ヶ月も経ってないのに容赦なく人のこと叩くんだけど。それが結構痛いのなんのって。
何するのー、って頭を撫でながら一氏君を見ればまた頭を叩かれて、何するやないわ、と怒られた。どうやら怒っている原因は私にあるらしい。

「お前アホなんか?あの白石の告白断るんはアホやけぇなんか?」
「だ、だって、よく知らないから…」
「やっぱアホや!聖書白石知らんとか、とんだアホがおったど!小春ぅ!」
「ユウくん、あんまし名前ちゃんのことアホ言うのやめときい。蔵リンが怒っとるで」

金色君の言葉に理解が出来なくて、近くに立つ白石君を恐る恐る見上げたら目が合い、微笑んで優しく頭を撫でられた。
そら、最初は死にとうなるほどショックやったけど、俺の見た目だけで告白受ける子と違うんやって分かって嬉しかったわ。と、白石君は一氏君に伝えて私を見た。死にたくなるほどって…私が友達からって言わなかったら大変なことになってたかもしれないってこと?うわあ、良かった…。

「お前らこんなとこで何しとん」
「通行の邪魔っすわ」

突然の声に一斉に振り向くと、ほとんど白に近い脱色した髪の人と、ピアスをいっぱいつけた黒髪の人が立っていた。どうやら白石君たちとは知り合いらしい。
一氏君は私の頭をぐりぐりと強く撫で回しながら、このアホの話聞いとったんや、と答える。さっきからアホアホ言いすぎじゃんか、一氏君ってつくづく私に対する態度が酷いと思う。
じっと私を見る二人に恥ずかしくて逃げ出したい。そんな私を助けるかのように予鈴が鳴ったので、猛ダッシュで教室まで逃げた。

13/11/26