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財前と謙也妹

白石部長と先輩らが突然、謙也さんに弟の他に妹がおるって言うてきた。俺には関係あらへん思って軽く流しとったけど、やけに先輩らが可愛い言うて来るもんやから、どうせ謙也さんみたいにうるさいんやないんですか、と言ったら部長はニヤリと笑うて会ってみい、なんて言うた。
謙也さんもそれを聞いて自分のことのように怒っとるし。ちゅーか、自分の事うるさい言われたのはええんか。
さっそく謙也さん家にお邪魔することなって、おばさんが優しく出迎えてくれた。連れられるがままに謙也さんと翔太の部屋に入ると、もう一人肩くらいの黒髪を揺らした女もおった。

「ただいまー」
「おかえりなさい、謙ちゃん」
「今日は後輩も連れてきたでー」

謙也さんを避けて顔を表した子は、想像していたもんとは違うて正直驚いた。なんや、全然謙也さんに似とらんやんか。
笑顔で挨拶してきた妹にどうも、と頭を下げた。その妹は時計を見るなりパタパタと部屋から出て行って、どないしたんですか、と謙也さんに聞いたら、夕飯の手伝いで消えたらしい。

「なあ光くん、相手してくれへん?」
「なんで財前や。俺が相手したるっちゅー話や」
「兄ちゃんは弱いからええわ」
「ええから貸してみい!」

言い争いを始める兄弟を他所に、謙也さんと翔太の部屋を見回せば、なんや妹との写真がようあった。主に謙也さんの持ち物に。写真フレームに謙也さんと白石部長、そんで妹のスリーショットのプリクラもあるし、まだ俺がテニス部入っとらん時のなんか知らんけど、先輩らと妹の写真もあった。
えらい可愛がられとるんやな、と何と無くそんなことを考えた。

13/11/26