neta | ナノ
「名前…!ずっと、…ずっと探してた」

突然目の前に現れた白銀の男に力いっぱい抱き締められ、私の首元に彼の息がかかる。私を抱き締める彼は、昔の攘夷戦争の時の仲間の一人で、坂田銀時、銀ちゃんという愛称で呼んでいた。そんな銀ちゃんの、ずっとという言葉に酷く胸が詰まる。
ずっとなんて…あの戦争から何年も経つのに、この目の前の男は一度たりとも私を忘れないで、探してたの?バカみたい、なんて侮辱の言葉とは裏腹に私の目からは大粒の涙がたくさんこぼれ落ちて、銀ちゃんの着物に染みを作っていく。

「ずっとどこに居たんだよ」
「松陽先生を探してた」
「…」
「でもね、どこにもいないの…先生は、もう居なくなってたの」

たくさん回ってきた、色々な場所を。でも、先生はどこにもいなかった。そんな言葉を口にするだけで、胸が苦しく、涙が止まらず。
銀ちゃん…、か細い声で彼を呼んで、その服を握り締めて。そしたら、銀ちゃんは大きな掌で私の背を撫でて。言葉がなくたって伝わってくる優しさ、温もり、全部ずっと私が探してたものだ。

「とりあえず、家に来い」
「ありがと、」

あの日から変わってしまった歌舞伎町、侍が自由に剣を持ち歩けなくなってしまったこの場所。私の知ってる歌舞伎町なんかじゃなくて。それを見るだけで涙が出そうになる。やだな、年取ったから涙脆くなったのかも。なんて、涙を拭って。

「銀さん!何やってたんですか…って!ちょっと!何やってるんですかァ!」
「うるせぇよメガネ…おい銀ちゃん!どういうことネ?!」
「はいはい黙りなさい、とりあえず家帰んぞー」

メガネを掛けた少年と、きっと夜兎と思われる女の子。そっか、銀ちゃんは今この子たちと仲間なんだ。寂しさ半分、嬉しさ半分。大切なものを背負うのを嫌がってた銀ちゃんに仲間がいるなんて、喜ぶことだよ。気兼ねなく言い合うその姿を見て、久しぶりに笑った気がした。

13/07/09