neta | ナノ
放課後の合図のチャイムが鳴り、騒がしくなる教室。黒子も部活に行く準備をしていれば、名前と約束した事を思い出した。けれど、自分からどう言い出したらいいのか分からずに、またも伏せてしまったまま起き上がらない背中を見て溜息を零した。今日は諦めて部活に行こう。黒子が教科書などで重くなった鞄を肩にかけたとき、名前の名前を呼ぶ声が耳へと入っていった。目をやれば、二人の女子が名前を誘っていたのだ。

「苗字君、今日カラオケ行くんだけど来ない?」
「…ん?あぁ、俺はいいよ」
「でもほら…」
「楽しんできてね」

笑顔に流された彼女たちは、頬を赤くして次は行こうね、と言い残して教室を出て行った。相変わらずモテますね、と黒子が声を掛けると、名前は欠伸をして、俺に奢らせたいだけじゃない?と。名前は分かっていない。自分がどれだけの女子に狙われているのか、ましてや男までもが名前を狙っているという噂も耳にする。

「あ、そーだメアド」
「赤外線出来ますか」
「んー…」

二人の携帯が向き合い、アドレスや電話番号が交差する。受信を選択した名前が、夜連絡するから、と言い黒子もそれに頷いた。
黒子っち、と元気な声で黒子を呼ぶ黄瀬の声が教室に響く。

「あ!苗字っちも一緒なんスね!」
「んじゃ帰るわ。じゃー、黒子」
「はい、また明日」
「え、俺のこと無視っスか?!」

名前は何度も黄瀬に呼ばれるが、そのまま振り向きもせずに教室を出て行った。

13/04/23