とろけるシュガーシロップ | ナノ
「うっわー…やっぱスゲー」
「……」

入部届けを出しに訪れたテニス部では、先輩たちがテニスで有名な幸村くん、真田、柳に何故か挑戦をしていた。幸村くんはにっこりと笑って、いとも簡単に先輩たちを倒してしまい、他の二人も凄かった。俺はそんな三人から目も離せずに呟いた言葉に隣りの仁王は無言。こいつ、ホント喋んねぇなー…。
チラリ、横を見た仁王は膝を抱えて、じっと三人を見ているだけ。はあ、と大きな溜息をついてコートに視線を戻したら、先輩たちが一人の女の子を囲んでるのが見えた。あれ、やばいだろぃ…なんて目が離せずにいたら、眼鏡の男の子…えっと、たしか柳生だったけ?まあ、そいつが間に入ってその子を連れてきていた。

「…おや、丸井君、仁王君。お二人も見学ですか?」

カチャリ、と眼鏡を上げる柳生は、女の子の手を掴んでいたのを離して俺たちにそう聞いて来た。「いや、今日は入部届け出しに来た」そう伝えたら微笑んだ柳生は「でしたら、これからチームメートという事ですね」と。こいつもテニス部に入るんだ…。

「ヒロくん」
「何ですか?」
「ヒロくんテニス部入るの?」
「ええ」

仲良さそうに話す二人に、もしかして付き合ってる…?と思った俺は、いまだに座ったままの仁王の耳元で「すげぇな…一年で彼女いるとか」「…アレ、彼女なんか」俺の言葉に珍しくまともな返事を返した仁王は立ち上がると「柳生の彼女なんか」と女の子に聞いた。
こいつ、正直な奴だな…と感心していれば、女の子はきょとんとした顔からふんわりと笑った。

「ヒロくんの?そんなわけないよ、幼なじみ!」

元気よく言い切った女の子から柳生へと視線を戻せば、柳生も笑っていて「幼なじみというより、妹と言ってもおかしくありませんが」と。柳生の言葉に怒った女の子は色々抗議をしてるみたいだけど、相手にしてない…というか、優しく宥めて俺たちに別れを告げて二人は消えた。

「今ん子、かわいいのう」
「は?!え、お前でもそういうこと思うわけ!?好きになったのかよぃ!」
「誰も好きとは言っちょらん。かわいいって言うただけじゃ」

ひょいひょいと何処かへ消えていこうとする仁王を急いで追いかけて、俺たちもテニス部を後にした。
そして、次の日、テニス部にマネージャーが入るという話しを柳から聞いて、俺はどんな女の子が来るのかとわくわくしていた。

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※アニメとは柳生の設定を変えています。