とろけるシュガーシロップ | ナノ
きっと真田以外は俺の気持ちをみんな知っているんだろうと思ったら頭が痛くなって、ぐしゃぐしゃと頭を掻いていたら隣りを歩いてた由莉が覗き込んできた。一瞬ドキッとして、けど平然を装うとして「なんだよ…」と顔を逸らしたけど、これ絶対平然装えてねぇ!

「ブンちゃん具合悪いの?」
「は…?違ぇよ…」

こいつが鈍感で良かった…と胸を撫で下ろしたのに横から仁王が「ブンちゃんはな…」と変なことを言い出そうとして慌てて仁王のちょろりと結ばれた髪を引っ張った。こいつは本当に余計なことばっかり言いやがる!キッと睨みあげてもケラケラと笑って反省なんてしない。
状況が分からない由莉は柳生に呼ばれて、別れ道で消えて行った。

「ブンちゃんはウブじゃのう」
「うるせぇ…」
「はっきり言わんとアイツには伝わらんよ」

そんなこと分かってる。けど、言えるはずなんてないし、言ったとしても脈アリだなんて思えない。由莉は誰にでも優しい感じだし、周りの男も可愛いって言ってるのも聞いたことある。しかも、アイツ自身が好きとか分かってるとは思えない。そんな状況で俺が言ったとしても…。
ムシャクシャしてまた頭を掻きむしって、みんなと別れた。





風呂から上がって夕飯までの間、部屋で携帯を弄ってたらクラスの女子からラインが来ていた。特に話したわけでもない奴で、送ってくる理由なんて分かってる。人に言えば自意識過剰?って思われるかもしんねぇけど、仲良しなわけでもなければ、まともに話したこともないただのクラスメートの男にハートの文を送ってくるわけねぇだろぃ。
その女子には適当な返事を送って、ふと由莉とのトークを開いた。送りたい、けど…と自分の恥ずかしいって気持ちが邪魔して文を打っては消して…の繰り返し。由莉も、他の女みたいにハートの文を送ってくれればいいのに…なんて考えて、通知を知らせる携帯を放り投げて、俺も同じようにベッドに体を沈めた。

目を瞑れば思い出すのは、中学一年の時のこと。初めて由莉を見たのがその時だった。もちろん、今のメンバーに会ったのもその時だった。

児童テニス大会で名を残していた真田と幸村くん。
東京の児童ダブルス大会で同じように名を残していた柳。
数年前に日本に引っ越してきたジャッカル。
いくら話しかけても会話が成立しなかった俺の中で変な奴認定した仁王。
中一とは思えないほど大人な考えで、レディーファーストだとか、紳士だとか女子の間では既に話題になっていた柳生。そんな柳生にベッタリな幼なじみだという由莉。

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