とろけるシュガーシロップ | ナノ
部活ジャージに着替えていると、突然扉が開いた。もちろんそこまでは別に構わない。他の部員かもしれないから気にすることはないけど、今回扉を開けた奴はマネージャーの由莉だ。女だ。
由莉は慌てる様子もなく荷物をとってさっさと出て行ってしまって。みんなもあまり気にしていないみたいだけど、俺の腹は沸々と何かが湧いて来て、着替えるのも途中に部室を飛び出した。

「お、おまっ!何やってんだよぃ!」
「何って、部活の準備してるよ?」
「じゃなくて!男が着替えてる時に入ってくるなよ!」
「えー?でも、ヒロくんで見慣れてるから別に…」
「そーゆー問題じゃないだろぃ!」

聞く耳を持たない由莉にどんどん声を荒げて、終いには俺を指差してブンちゃん上着ないの?だと。人の話聞けよ!……って、そうだ!俺、着替えの途中で飛び出してきたから上裸だった…!慌てて周りを見ると女がうざいくらいに騒いでいて恥ずかしくなってそそくさと部室で急いで着替え、また由莉のところに戻ってボールの入った籠を持ってやるとふんわりとわたがしのように笑った。
それにしても、こいつの危機感のなさには本当に呆れる。あとで柳生に説教してもらうしかねぇな。





「あー…疲れたー」
「お疲れ、ブンちゃん!お菓子あるよ!」
「おう。サンキュ」

幸村君の扱きに疲れた体をぐっと伸ばす。由莉がくれたお菓子に手を伸ばそうとしたら横からひょいっと手が出て横取りされた。くっそ、誰だよぃ!隣りで、横取りしたお菓子を幸せそうに頬張っている赤也がいてイラッとした。

「おいこら赤也、俺のお菓子横取りしてんじゃねぇよぃ」
「えー!丸井センパイのじゃないっスよ!」
「俺にくれようとしてたんだから俺のだろぃ」

ぎゅっと頬を抓ってやれば痛そうに顔を歪めて少し気分が良くなった。もう一つ貰おうと由莉の方を向いたらいつの間にか他の奴のところに行っててイラッとして赤也の頭を思い切り叩いてやったら大きな声で叫ぶ赤也。

「ちょっと丸井センパイ!八つ当たりしないでくださいよ!」
「うるせぇ、てか八つ当たりってなんだよぃ」
「え?そんなの丸井センパイが…いってぇ!!」
「うるせぇ」

は…?どういうことだよ。なんで赤也にもバレてんだよ。つーかジャッカルお前そんな顔してこっち見んな。は?つーか、ジャッカルにも気づかれてるのかよ。てか、みんな知ってんのかよもしかして!
ふと目が合った幸村君と柳がふっと笑って、顔中に熱が一気に集まった。

「死にてぇ…」

あとで心配そうに俺の所に来る由莉と俺をニヤニヤと見てくる仁王を殴ろうと決意した。

0712