プロムナード | ナノ


騒がしい店内で緑間は眉間に皺を寄せていた。なぜ自分がこんな所にいるのだ。今頃帰って勉強をしているはずの時間だ。ちらちらと店内にある時計を見てはイライラするように貧乏揺すりをし。それに気付くのは赤司、桃井、黒子、黄瀬だった。紫原はポテトに夢中で、青峰も同様にバーガーに夢中だから緑間の変化になど気付くはずもなく。

「ミドリンもそんなイライラしないでさ!」
「…トイレに行ってくる」
「あ!俺も行くっス」

緑間が眉間を押さえて立ち上がると、軽快な声で黄瀬もついて行った。周りの女子はきゃあっと黄色い声を上げて、黄瀬は答えるように手を振る。モデルをしている黄瀬のファンサービスだ。

「そーいや、高尾っちいたっスけど、声掛けなくて良かったんスか?」
「高尾など知らん」
「またまたぁー!」

静かにトイレも出来ないのか、と緑間はまた一つ溜息を零し。黄瀬は幸せが逃げるっスよ、と自分に対しての溜息だなんて微塵も思っていない。
早々と手を洗って黄瀬一人置いてトイレから出ると、先ほど高尾たちが座っていたテーブルに小さなウサギのストラップがついた携帯が置いてある。荷物もないそのテーブルに、忘れ物だろうと認識をして店員にでも届けようかと緑間が手を伸ばした瞬間、黄瀬が大きな声を出し。

「高尾っちと一緒にいた子の忘れ物っスよ!帰る時に少しだけ話した」
「そんなこと分かっているのだよ。白野ひまり、高尾が休憩中に言っていた」

どうしたものかとその携帯を持った途端、白銀が視界に写り込み、先ほどの黄瀬同様に大きな声を出した。それ私のです!と。
それでも店内の方が騒がしく、緑間と黄瀬の耳にしか届いていないようで。ぱちぱちと瞬きを繰り返す黄瀬と目が合ったひまりは一気に青冷めて緑間から携帯を受け取るとそそくさと出て行った。

「あれ?!俺怖がられてる!?」
「知らん」

ぽつりと黄瀬が一人その場所に取り残され、あっと言う間に女子に囲まれ撮影会が始まったのはまたあとの話し。

0909