プロムナード | ナノ


コンコン、と扉をノックする音が聞こえる。心地のいい声が頭の中で響く。ひまり、朝だよ。低音でいて、そこまで低すぎないこの声は辰也くんのもので。小さく返事をして寝返りを打てば、クスクスと小さな笑い声が聞こえて。それが、もっと私の眠気を誘う。

「早く起きないと置いて行くよ?」

ふわりと頭を撫でられ、ゆっくりと目を開けるとニッコリと笑う辰也くんがいた。優しいお兄ちゃんみたいな存在の辰也くん。着替えたらおいで、と言い部屋を出て行く後ろ姿をぼーっと眺める。パタリと扉は閉まったけれど頭がどうも働かない。
のそりと立ち上がって時計を見てみれば、7時を過ぎていた。そっか、もうこんな時間だ。クローゼットに入っている制服を取り出して、ゆっくりとだけれど着ていく。

昨日の、アレは夢だったのかもしれない。だって、生徒会が一年生なんて、そんなのあるはずがないもん。

脱衣所に向かうと、キレイなタオルが置かれていて、それを手に取って顔を洗えば一気に頭はスッキリとする。歯磨きもしてしまえば、眠たかった気持ちは消えていた。
リビングでは、大我くんが作った朝ご飯が並べられている。朝なのに、大我くんの作った料理を見てしまえば食欲もわいてしまう。

「今日ね、変な夢見ちゃったの」
「夢?どんな夢?」
「生徒会のほとんどが一年生っていう夢」

おかしいでしょ、と二人に笑いかける。けれど、大我くんは食べるだけで反応なし。それでも、いつも辰也くんだけは答えてくれていた。なのに、今日は不思議そうな顔をしていて。どうしたんだろうと思いながらも、魚を一口。

「…ひまり、それは夢じゃないよ?」

辰也くんの言葉が理解できなくて、手が止まる。夢じゃ…ない?ということは、あれは全部本当で、他の人たちは一年生が生徒会になるっていうこと、しかもメインになることを許した…ってこと?
驚いて何も言えない私を気にする様子もなく、辰也くんは話を進める。生徒会の一年生は特待生っていうものらしい。詳しくは知らない、と笑顔を見せる辰也くんは、彼らと仲良くなってみたら分かるかもね、と言った。

…仲良くって、そんな特待生の人たちと……出来るわけないよ。

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