BIRTHDAY | ナノ
今日は雪男もいねぇし、宿題しろとか言われねぇからラッキー。ごろん、とベッドに横になってSQを読んでいれば、爆発音が聞こえた。まさか、悪魔か!?急いで音の聞こえた方に向かえば、オーブンから黒い煙がモクモクと出ていた。傍には、泣きそうな名前がいて、急いで鍋に水を入れてオーブンへとかけた。なんとか煙は収まったけれど、泣きながら俺を呼ぶ名前がいて、どうしたんだよ、と名前の隣りにしゃがみ込んで聞く。

「ケーキ、作りたかったの…」
「?買いに行けばいいじゃねぇか」
「それじゃだめ!」

ぐずぐずと鼻を啜る名前は、オーブンの中に入っていたケーキの生地らしきものを取り出して捨てた。そんな名前を見ていられず、仕方ねぇなぁ、と言って名前の隣りに立てば、不思議な顔をする。
俺が手伝ってやるよ!
自分の得意な料理だ。それに、ケーキなら昔何度も作った事がある。だから泣きやめ!少し乱暴に名前の目を自分の服の袖で拭ってやった。小さな声で、ありがとうと言ってまた鼻を啜る名前。

「で、なんでケーキを作りたかったんだ?」
「…それは言えない」

口を一つに結んで何も話さなくなった。まあ、いいや。そうやって流してから、とりあえず下準備から始めようか、とエプロンを着けて袖を捲る。出来るだけ手を出さないで、と言った名前にそわそわとしながらも、出来るだけわかりやすく説明をしてやる。料理に関しては俺が一番上手いからな!誇れるものを胸に秘めて、自分が初めて作った時のことを思い出して、名前のことも褒めてやろうと思った。俺が、親父に褒めてもらったように。


***


「で、きた…!」

何度も失敗を繰り返したケーキの生地は、少し傾いているけど名前の作ったケーキの中で一番膨らみが良かった。デコレーションも、よくできている。けど、ホールを作るなんてどうしてだ?一人で頭を悩ませたけど、俺に思い浮かぶはずがなくって。とりあえず、生地の残骸で何を作ろうかと考えた。
さて、と手を洗って包丁を持った時に、隣りで名前が何かをしているのが見えた。

「h、a、p、p、y…?」
「わ、わあ!」
「何だそれ。何書いてんだよ」
「えっと…、…燐、お誕生日おめでとう!」

名前からの言葉に驚いて、急いでカレンダーに目を向ける。そう言えば、今日は27日だった。そのために、一生懸命作ってくれたんだ。俺に手を出さないで、と言って、自分で作りたかったんだろう。

Happy Birthday
(サンキューな、名前!)(でも、燐が教えてくれたから…)(いや、だってアレは食えねぇだろ!)(…っバカ燐!)(え?!)

12/27 燐聖誕祭