BIRTHDAY | ナノ
いつもの木の下で本を読んでいれば、影が近づいて来た。また来たのか、と思って溜息を吐きながら本を閉じて、その方向を見てみれば私の考えていた人物とは違う人だった。

「…リナリー」

私が彼女の名前を呼べば嬉しそうに笑顔を見せて、隣に座る。拍子抜けした、というか…別に、彼に来てほしかったわけでもない。どうしたの、とリナリーに聞けば、名前と話したくて、と彼女は言う。その用件を聞いているのに、中々話そうとしないリナリー。とうとう私が痺れを切らして、早く教えてよ、とリナリーを見れば可愛らしく笑った。

「今日はね、アレン君の誕生日なの」
「…私には関係ないよ」
「そんなことないわ。アレン君は、きっと名前の言葉を待ってる」

そっと風が吹いて、私とリナリーの髪を揺らした。
いつまでも、そんな意地を張ってるとロードに取られちゃうわよ。
どうしてロードが出てくるの。彼女は敵じゃない。…確かに、彼にとても懐いていたけれど。口を一つに結んだまま何も話さない私の頭を撫でると、食堂にいるから、と言った。きっとそれは、アレン・ウォーカーのことなんだろう。
立ち上がったリナリーを見上げたまま動かない私に、行こう、と手を引いた。足はそのまま彼女について行く。どうして私から彼に会いに行くの。これは、無理やりだもの、仕方ない。なんて一人で言い訳を考えていた。

「本当に、アレンはもやしのクセによく食べるな」
「もやしじゃありません」

食堂に近づくごとに楽しそうな話し声が聞こえて来て、私の足は重くなる。中に入れば、たくさんの食べ物がアレン・ウォーカーの前に広げられていて、彼はそれを頬膨らませて食べていた。
最初に私たちに気付いたのは、ラビで笑顔で手を振る。リナリーは私から手を離して、アレン・ウォーカーに近づいて行った。何かを話していて、終わったかと思うと彼がこっちを見た。

「アレン君に言いたいことあるんでしょ?ね、名前」
「……お、めでとう。…アレン」
「ありがとうございます」

彼は、アレンは、いつも通り優しい笑みを見せて、こっちで一緒に食べましょう、と立ち上がって私の手を引いた。

Happy Birthday

(お、名前がデレた!)(うるさい)(あ、あれ?今の幻だったんさ?)(静かにして下さい)(アレンまで!)

12/25 アレン聖誕祭