ゲーム、スタート | ナノ


三年生の階へと行けば、一年生の上靴を履いた私を不思議そうに見る人ばかりだ。もう、どうして私が恥ずかしい思いをしなきゃいけないの。頭の中で文句を言っていれば、幼なじみのクラスへと到着した。けれど、いくら見ても私の探している相手が見つからない。どうしてだろう。知らない人に聞くのも、なぁ…。

「あれ、マコちゃん?」
「…森山さん」
「笠松か?あいつならトイレだと思うよ」

偶然会った森山さんは、私が聞くよりも先に教えてくれた。ありがとうございます、と言えばニコリと笑ってどういたしましてと返してくる。仕方ないから待っておこう。窓際の廊下の壁に背を預けると、森山さんも私と同じようにした。もしかしたら居心地の悪い私を気遣って、一緒に待ってくれるのかもしれない。笠松、弁当忘れたんだろ?と、どうやら幸男の事情を知っているらしい。バカですよね、と私が思ったことをそのまま口にすれば、ぽかんとした後に笑い出した。私が正直に言ったことが面白かったのかもしれない。

「お、笠松来たよ」

森山さんの言葉に、指差された方向を見てみれば不機嫌そうな顔をして歩いて来た。…その後ろには、黄瀬もいた。なんで、あの男がいるの。ああ、そうか。確かバスケ部だったっけ。なんてぼんやりと考え込んでいた。幸男は私に気付いて近づいて来る。後ろの黄瀬は少し眉を寄せていた。

「悪い、マコ」
「そう思うなら忘れないで。笠松センパイ?」

「…二人って知り合いっスか?」

幸男と話していると間に入ってきた黄瀬を見れば、驚いた顔をしていた。どうやら私と幸男が幼なじみということを知らないらしい。ご丁寧に幸男は説明をしていて、驚いた顔から面白そう、という顔をした黄瀬に嫌な気しかしなくて、森山さんに頭を下げて教室へ帰ろうと階段へ向かう。そんな私の予想は当たっていて。気持ち悪い笑みを浮かべた黄瀬が後ろからついて来る。

「センパイと幼なじみだったんスねー」
「……」
「ならさ、今日の部活見に来ないっスか?」
「…なんで」
「いやぁ、幼なじみの活躍見たくないスか?」

なんなの、さっきから。席に着いた時にチャイムがタイミングよく鳴って、先生も入ってきたから黄瀬との話は中断になった。けれど、隣りで機嫌良さそうに頬杖をついていた。

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