-273℃の絶対零度 | ナノ
一方、赤司たちとは別の仕事をする黄瀬と黒子。探すといっても、どうすればいいのかも分からず、ブラブラうろつくだけだ。黄瀬は先ほどから幽霊を恐がり、黒子から離れてくれず仕事にもならない。
それだけではなく、探し人の特徴も分からずに探せるはずもない。人気の少ない路地裏の奥へと進み、黒子は幽霊に振り返って問う。

「探し人の特徴を教えてください」
『……ら………る』

三回聞き返しても、やはりそれは聞き取りにくく。黄瀬がもう一度頼もうと顔を近付けた。
その瞬間、黒子は察知したのだ。やつは人なんて探してない。黄瀬に離れろと叫ぶ前に、やつの髪の毛はみるみるうちに伸びていき、黄瀬の首に、黒子の首に巻き付いていく。

『オマエラ…コ…シテヤル』

殺気の満ちたその目に気が狂いそうになる。もがけばもがくほど締まる。黄瀬はすでに気を失い、黒子も朦朧としていた。
嗚呼、苦しい。僕はこのまま…。空を見上げても建物しか見えず、気は滅入るばかりだ。
意識を手放そうとした黒子。そんな時に隣の黄瀬が髪の毛によって持ち上げられていたはずが、ドサリと黒子の視界から落ちた。次に黒子の首に巻き付いていた髪も黄瀬が切って落ちたのだ。

「っは、き、せく…!」
「黒子っち…、だ、じょぶ…スか!」

荒い呼吸を繰り返す二人に、再び近づく髪の毛。逃げる体力もない二人はズルズルと後ろに下がっていき、とうとう壁が背中に迫る。もう駄目だと目を瞑った。
その時、見たこともないような光りが路地を包む。薄暗い路地が明るくなる。やつのもがき苦しむ声が耳を突き刺す。眩しいがどうなっているのか気になる黒子がうっすらと目を開くと、やつと黒子たちの間には一人の女が立っていた。

足が透けた女が。

目も眩むほどの恐怖と
(…大丈夫ですか?)
(はい…あなたは…?)
(幽霊です)
(…え?)

0909