111 | ナノ
仲良しの友達と好きな子が被った。
ハルは、そういう話しをしてくれるような子じゃなかったから、それを話してくれた時は嬉しかったんだど、俺と同じ好きな人だっていうのには驚きを隠せなかった。
もちろん、ハルにそんなこと言えるはずなくて、曖昧に笑ってやり過ごした。

そんなハルが、苗字さんに告白するって言い出して。正直凄く戸惑った。もし苗字さんが了承したらどうしようなんて…。でも、それと同時に悲しむハルを想像したら俺まで悲しくなって。

「ねえ、橘くん」
「あ、な、なに?」
「七瀬くん知らない?なんか、私を探してるって聞いたんだけど…」
「ハル?…どこだろ、わかんない」

「そっか、ありがとう」と笑顔で去っていく苗字さんを見ていたら、やっぱり気持ちが抑えられなくて、つい手を掴んでしまったら驚いた顔をしてきちんと俺に向きあってくれた。
だめだ、ハルの顔がチラついて…俺が先に云ってしまえば、なんて考えていたのにとても言えそうにないよ。

「…ごめん、なんでもないよ」

放す
(掴んでいた手をそっと放した)

0519