thanks | ナノ
夜の10時ごろにラインが来ていて、確認してみたらモデルの仕事で忙しい涼太くんだった。明日はオフだから会えない?と短い文章で、それでも久々に会えることが嬉しくてもちろん、と返事をして眠りについた。

なのに、涼太くんの家に来たものの涼太くんは寝ていて起きる気配がない。まあ、仕方ないか。寝る時間も惜しむくらい人気モデルだもの。
ベッドで気持ちよさそうに眠る涼太くんの髪の毛を撫でると、瞼がピクリと動いてゆっくりと目を開けた。眠そうな顔までもキレイで思わず見惚れてしまう。

「あ、れ…なんで…」
「昨日涼太くんが会おうって言ったの」
「そっか、ごめん…俺…」

まだ眠たいのか目を擦る彼に、寝ていいよ、と言ってあげる。久々の涼太くんのオフを邪魔するほど私は酷い女じゃない。それでも、少し寂しさを感じてしまって…。
帰ろうかな、と立ち上がろうとする私の腰に涼太くんの腕が回って制された。

「どこ行くんスか…」
「え、邪魔しちゃ悪いかなって」
「だめ、今日は一緒にいるって、言ったじゃないスか」

ぎゅうっと力が強くなりそのまま涼太くんの横に転がされた。ベッドに寝転ぶと同時に涼太くんの匂いが鼻を掠めてきゅっと胸が締め付けられる。そんな私にすり寄ってくる涼太くんが可愛くて、私もそっと彼の背に腕を回して抱き締めた。
自分よりも背が高くて、たくさんの女子にカッコイイって騒がれる人を可愛いって思うなんて変な話。それでも、私にとっての涼太くんは高校からずっと可愛い人なんだ。
だんだんと私の目も虚ろになっていって、優しい匂いに包まれてそっと目を閉じた。

***

目が覚めたのはあれから三時間も経った時で、慌てて私が起きるとベッドには私一人しか残っていなかった。リビングの方から聞こえる小さな音に不思議に思って覗いてみると涼太くんがキッチンに立って料理を作っていた。

「あ、おはよう…ってもう昼過ぎっスけどね」

にっこり笑った涼太くんに慌てて駆け寄って行くと首を傾げられて。私が作ったのに、と言えば涼太くんは私の頭を撫でて、今日は俺が作るから、と。せっかくオフなのに。本当なら涼太くんにはずっと休んでいてほしかった。
テレビをつけて素直に待っていると、目の前に出されたのはこの前涼太くんが出ていたテレビで特集されていた料理だった。テレビとまったく同じそれに驚いて涼太くんを見れば照れ臭そうに笑った。

「名前が食べてみたいって言ってたから」
「あ、ありがとう」
「いいっスよ。はい、あーん」

ここまでしてくれなくてもいいのに、と思う反面、涼太くんとのこの時間が幸せで口の中に広がる味や、この空気を堪能した。

君の全てが愛おしく

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