thanks | ナノ
今日は天気もいいしホースを伸ばして弟と妹と庭の花に水やりをしていた。そうしたら庭の外で小さな叫び声が聞こえて、驚いて三人で飛び出すと二人と仲良くしてくれている俺の高校の先輩が頭からずぶ濡れになって立っていた。あれ、もしかして俺がかけちゃった…?

「もしかしなくてもそうでしょ、こんな天気良いのにずぶ濡れの馬鹿がどこにいるの」
「え、わ、わああ!すみません!」

慌てて謝るとおかしそうに苗字先輩は笑って。二人は嬉しそうに苗字先輩に話しかけていて、すると途中でくしゃみをしたから慌ててお風呂を貸すことを伝えたら大きな瞳を真ん丸にしてからふんわりと微笑んだ。
先輩の何気ない笑顔とかにドキドキしちゃって、急いでお風呂の準備や着替えとかを準備した。俺の服だと大きいだろうけど、それ以外に着る物なんてないし…いいよね?一人で自問自答を繰り返しながら、今頃お風呂に入っている先輩のことを考えて悶々となって。

「お風呂ありがとう」
「わ…っ、あ、はい。俺が水掛けてしまったんで…すみません」
「いいよ別に」

やっぱりぶかぶかだ。弟と妹と楽しそうに話してくれる先輩の後ろ姿を見ながら、大きすぎて出ている肩や、丈が長いのか折ってある裾にばかり目が行く。慌てて目を逸らした先に時計があって、時刻は1時を指していた。
父さんも母さんも出かけていないし、仕方ない…俺が作ろうかな。よいしょ、っと立ち上がると先輩が俺を見上げて、どうしたの?と首を傾げた。

「お昼を作ろうと思って。先輩も食べますよね?」
「食べる食べる。あ、お礼に私が作るよ」
「え…いいですよ!お客さんにそんなこと出来ないし…」
「いいから。待ってて」

俺の制止を聞かず先輩はずんずんと台所に進んで行った。慌てて追いかけると、俺に目配せをしてから嫌いな物ないよね、と聞かれて咄嗟に頷いた。
それからあっと言う間においしそうな料理が完成していって。母さんよりも上手なその見た目に涎が出そうになる。

「わあっ!名前ちゃんお料理上手だねえ!」
「僕、名前ちゃんの料理毎日食べたいよ!」
「そう?ありがとう」
「あっ!ねえ、お兄ちゃんと結婚してよ!そしたら毎日名前ちゃんの料理食べれるもん!」

苗字先輩の料理がおいしすぎてべた褒めする二人に笑みが零れて、俺も一口食べた途端に妹の発言に喉を詰まらせた。何言ってんの、と慌てて口を塞いだけどそんなのは手遅れで。目の前で目を真ん丸にさせた先輩がにっこりと笑った。

「そうだねぇ、お兄ちゃんが嫌じゃなかったら」
「…え!?」

先輩の突然の発言に顔がだんだんと熱くなっていく。それって、期待してもいいっていうことなんだろうか。ちらりと先輩を見たら、相変わらずの笑みで俺を見ていた。

それはいったい、え、まさかの、

1105 thx.家出