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寒い寒い冬になって、明日明後日には雪という天気予報が出始めた季節。今日も相変わらず冷たい空気だ。早く家に帰って、温かい炬燵と仲良くしたいのに、どうして私はこんなところにいるの。聞こえるのは、怒鳴り合うような声とボールの音。さつきと緑間は、先に帰っちゃうし、なぜか私は帰してくれないし。はあ、と白い息で冷えた指先を温める。

「寒いですね」
「あ、あれ。黒子やめたの?」
「はい。彼らにはついていけれません」

黒子の視線の先には、青峰と黄瀬が1on1をしていた。赤司と紫原はつまらなそうに見ている。みんなは汗をかいて熱いかもしれないけど、私は寒いんだけど。もう我慢の限界で、帰る、と言って鞄を持って立ち上がれば、いつのまにここまで来たのか、青峰がバサリと自分の着ていたブレザーを私に投げ捨てるように渡して来た。

「おら、これ持っとけ」
「私帰るんですけど」
「いーから持っとけ。下に置いたら汚れんだろ」
「青峰のくせに、何気にしてんの」

俺様な態度をしたまま戻って行く。今度は、みんなでするみたいだ。信じられない、帰してくれないとか。とりあえず、もう一度座って手にある青峰のブレザーを使ってやろうと思い肩にかけた。さっきまでの温もりなのか、妙に温かい。
まあ、これならいくらか過ごせる。もう一度、コートに目を向けると、紫原がゴールを決めた所だった。隣に座った黒子は、仲良しですね、と言うから、そうだね、と返す。ほんと、みんな仲良しだねぇ。

「違いますよ。苗字さんと青峰君の事です」
「…えぇ!?全然仲良くないよ?」
「仲良いじゃないですか。上着、貸してくれましたし」
「違うでしょ、あれは。ただの友達だって」

でも、とまだ続けようとする黒子は、そうですね、と言った。早く気づきませんかね、と言った黒子にそうだよねぇ、と続ける。早く、私が風邪引きそうなことに気付いてほしいよ、全く。くすくすと笑う黒子が隣にいることに気付かず、青峰のダンクを見ていた。


雪がすべてを溶かしていった

おい、見たか。と私たちに言う青峰に、見てない、と言えば嘘吐くな、と返された。うるさいばか、ボール取られてるし。ふん、と余所を見れば、後で覚えてろよ、という声が聞こえて寒気がした。隣の黒子は、くすくすと笑っていた。

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