thanks | ナノ
愛していた。本気で。彼の為なら、私の全てを差し出してもいいと思った。けど、彼の隣りで幸せそうに笑うのは、私なんかじゃなくって。それでもいい。彼の傍にいられるだけで。なのに、簡単に突き放されてしまって。嗚呼、この想いをどこにやればいいの。涙なんて出てこない。ただ出てくるのは、何で、という言葉だけだ。あの子よりも私の方が可愛いのに。私の方が彼を愛しているのに。


「…泣いているのか」


赤い髪をした彼は、赤い瞳を私に向けた。泣いてるわけない、とそっと頬に触れたら濡れていて、泣いてることが分かる。やっぱり、悲しかったんだ。捨てられてしまったことが。消えていく彼の背中を見つめていれば、傍に立つ赤い彼はそっと抱き締めてきた。引き寄せて、力いっぱい抱き締めて。そんなに奴がいいか、と言う彼にそうね、と一つ。でも、もうどうでもいいの。彼、赤司征十郎という男は苦しそうに瞳を歪ませていた。この後の言葉なんて想像できてしまう。予想通りの、好きという二文字の言葉。嗚呼、もう誰でもいい。私を必要としてくれる人がいるならば、誰だっていい。彼じゃなくたって、目の前の赤司くんがいるじゃない。

逃げた、彼から。逃げた、彼の愛へ。逃げた、悲しみから。私は最低な女。でも、そうするしか他なくて。愛してるよ、という言葉に耳を塞いだ。



赤司くんが私を愛して、私が彼を愛して、彼が他の女を愛して。私の想いも、赤司くんの想いも届かずに、自分の欲を満たすためだけに何度も重ねた身体。そんな日が続いて、気がつけば一ヶ月が経とうとしていた。赤司くんと出掛けていると、他の女と並ぶ彼を見て、粉々に崩れた私の心。きっと私は、頭の隅で彼が戻ってくることを考えていたのかもしれない。それをあっけなく崩されてしまって、ガラガラと音がなる。


「…名前」

「……」

「……僕だけを、見てくれないか」


こくりと頷いて、差し出された手に自分の手をそっと重ねた。
ごめんなさい。こんな私で、汚くて、人に頼ることしか、逃げることしか出来ない私でごめんなさい。貴方を愛する努力はしているの。けれど、いつも彼が私の脳内で邪魔をする。嗚呼、本当に私は最低な女。叱ってくれていいのよ、手放してくれたっていいの。別に貴方を責めたりなんてしない。

けど、手放された時に私は貴方を簡単に忘れてしまうかもしれない。


報われないことは分かってる
(僕は君を愛してるから)
(…ありがとう)
(いくらだって言うよ)
((ごめんなさい))

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リクエストありがとうございました!遅くなってしまい申し訳ありません!病んでます…。歌詞も読んで、歌も聞いて、自分の中ではこのイメージに仕上がりました。とてもカッコイイ曲でしたので、書いている間もドキドキと…。ヒロインも赤司くんも可哀相な運命なんですが、意味不明ですが、ぜひこれからも宜しくお願いします!

thanks!
Waltz Of Anomalies/ナノウ様 feat.初音ミクAppend