thanks | ナノ
さらさらと柔らかい風が頬を撫でる。後ろにある木に背を預けて、読んでいた本にしおりを挟んで閉じた。空を見上げれば、自分の頭とは正反対の色が白い綿菓子のようにふわふわとした雲を運んでいた。そっと目を閉じれば思い出すのは、彼女との小さな時の思い出だ。かくれんぼうが大好きな彼女はいつも隠れる側で、僕は探す側だった。だけど、すぐ見つけてしまってすぐに終わる。


「・・・もう、いいかい」


懐かしい言葉を呟いてみたけれど、空に呑み込まれていった。・・・かと思えば、元気な声でもういいよ、と彼女が現れて空を仰いでいた僕に影が出来た。


「誰とかくれんぼうしてたの?」


僕の隣りに座って顔を覗き込んできた名前。誰ともしてないよ、と言って目を逸らした。いつの間にか空には、さっきの雲とは違う大きさのものが浮いている。ずいぶんと懐かしい遊びだね、と笑うから、少し思い出したんだよ、と言った。そしたら、私はいつも征が見つけられなかったよと笑うから、目を少しばかり伏せてそうだねと頷いた。
小さな時からいつも僕ばかりが名前を好きだった。名前と遊びたいのに、いつも他の子と一緒にいて僕は放っとかれてばかりで。たまに名前から誘ってくれる時があったけど、他の女の子が僕の所に来れば遊んでおいでなんて言って。いつだって、僕の気持ちと名前の気持ちの大きさは違った。


「征は、すぐに私を見つけられたのにね」

「そうだね」


よいしょ、と掛け声をあげて立ち上がり、スカートについた草を払っている名前を見上げると驚いた顔で僕を見た。悲しそうな顔に変わって、ストンと僕の前で膝をついてそっと頬に手が添えられ。名前の表情も行動も分からない。やっと口を開いたかと思えば、なんで泣いてるの?なんて・・・。僕が泣くわけないのに何を言ってるんだ。笑ってやろうと思い目を細めれば、つーっとくすっぐたいものが頬を伝い落ちた。どこか痛い?悲しいことでもあったの?なんて名前までもが泣きそうな顔で言うから、なんでもないよ、と言おうとすれば温もりが僕を包んだ。


「征が泣くと、私も辛いよ」


たったその言葉に、胸の奥が締め付けられる。下がっていた腕はだんだんと上に上がっていって、ぎゅうっと力いっぱい抱き締めた。何十年もの想いが積もりに積もって、溢れ出ていきそうで、涙声で絞りだした声で好き、と言った。精一杯だ。


「・・・遅いよ、ばか」

「・・・・・・え?」

「私だって、ずっと征が好きなの」


待ちくたびれた、と笑って名前の額と僕の額がくっついてコツンとなる。幸せそうに笑う名前の頬に、今度は僕の手が添えられて引き寄せるようにキスをした。幸せいっぱいのキス。


見つけた


0929
リクエストありがとうございました!歌詞通りにしようと思ったのですが、ほとんどイメージに・・・。赤司くんの幼なじみ設定にしてます。幼なじみステキ。そして、ロストエンファウンドも素敵すぎますね。こう・・・キュン、と胸が苦しくなります。絶対に見られないような赤司くんを書きたいと思ったので、悔いはたぶんないです・・・!これからも当サイトをよろしくお願いします!

thanks!
ロストエンファウンド/sasakure.UK様 feat.初音ミク