thanks | ナノ

ふんふん、と鼻歌を歌いながら頼まれたお遣いから帰っている時、河原を通れば一人で座りこんでるあの子がいた。ぼんやりとしているように見えるその背中。俺は、なーにしてんの、と声を掛けに行ったけど、聞こえていないのか返事がない。とりあえずと思って俺も隣に座る。だって、なんか悲しそうに見えたんだよ。そんな子ほっとけると思う?思わないよね。二人でぼんやりとしていると、そのうち雨が降り出して来て、俺が慌てて折り畳みの傘を取り出したら、そっとこっちに寄って来た。


傍にいるから



今度は膝を抱えて、体を小さくする苗字ちゃんはすごく可愛くて。好きだなぁって言葉がつい口から溢れた。だから慌てて口を押えたのに苗字ちゃんは気にしてる様子もなくて、どうして好きが分かるの、と言った。その声が悲しく聞こえて、何があったのか聞いたけれど首を振るだけで答えてくれない。学校でいる時と違って笑わない苗字ちゃんを笑顔にしてあげたくて、面白いことをいっぱいいっぱい言ったけど駄目だった。


「・・・一人になりたいの」

「で、でも・・・」

「お願い」


目も合わせずに言う苗字ちゃん。そっとその場を去ろうとした時、苗字ちゃんの様子がおかしくなって目を見開いていた。だからその視線の先を辿っていけば男子と女子が歩いてて、男の方がじっと冷めた目でこっちを見ていた。だから俺は苗字ちゃんの目をそっと自分の手で覆ってあげる。


「何、してるの?」

「ん?だいじょーぶ、だいじょーぶ」


少し黙っていたけど、一人にしてって言った、と言い出すから、俺は正直にやだって言う。だって、苗字ちゃんの傍にいたいって思ってるのに、そんな言葉聞けない。そう言ってやると、じわじわと掌が濡れていくのが分かって、苗字ちゃんは泣いてる、と気付いた。だから今度は前から抱きしめてあげて、だいじょーぶ、と言って背中を撫でてあげる。


0827
宮下さんリクエストありがとうございました!理想論、なんて切ない曲・・・。恋愛っぽくはないですが、大人な千鶴がヒロインちゃんを支えてあげるっていうのが合ってるかなと思い完成しました。千鶴っぽくない千鶴・・・!でもでも、こんな千鶴もありなのかなって思ってます。千鶴は基本あだ名呼びですので、苗字にちゃん付けで呼ばせました。ぜひこれからもよろしくお願いします。

thanks!
理想論/におP様 feat.初音ミク