thanks | ナノ

ニコニコと笑顔で私の前に座っている彼の口から紡がれるものはいつも彼女の名前ばかり。彼女とどこに行った。彼女と何を見た。彼女と何をした。全部、全部全部、私の名前じゃない。彼女の名前。どうしてそんな話を元カノの私にするの、と彼に言ったこともあった。けれど彼は、どうしてしたらいけないのみたいな顔して。そんな彼の顔を見たら苛々してきて、吐き気が襲ってくる。彼のことは嫌いじゃない。


むしろ・・・、


倒してしまおうか



「でっさー、アイツってば・・・」

「・・・」


トランプでタワーを作っている和成。四六時中ニヤニヤとしながら自分の彼女のことについて語っている。ていうか、そんなのは元カノと私にじゃなくて相棒の真太郎にでも話せばいい。どんどん高くなっていくタワーを見ながら和成の惚気を聞く、なんて拷問なの。ムカムカ、イライラとしてきた私は横からタワーを触って崩した。和成は何すんだよ、なんて思ってた通りの反応で。私は、自分に聞いてみなさいよと言って教室を出て行く。


「おい、名前!止まれよ」


何度も何度も私の名前を呼んで追いかけてくる和成だけど、私は無視してどんどん進んで行く。だけどそれも叶わずに腕を掴まれてしまって止まるしかなくなった。また名前を呼ばれて、それに被せるように気安く呼ばないでと言った。だって、勘違いするかもしれないでしょう?結局恥をかくのは私だけじゃない。私のさっきの言葉のせいで沈黙になってしまい、それを破ったのは和成の方からだった。どうしてそんなこと言うんだよと言った和成は下を向いていた。だから和成の両頬に手を添えて、目を瞑ってみて、と言った。躊躇いながらも目を瞑る和成を見て笑いが零れる。


「何期待してるのよ、何もしないわ」

「な・・・っ!・・・んだよ」


和成の怒った声が聞こえたかと思えば、ぐいっと引かれてぶつかった。・・・ぶつかったのは、私と和成の唇。全部私の思っていた通りに進んで、ほら、あそこに和成の彼女がこっちを見てる。驚く彼女に笑って、私は和成と彼女を挑発するように和成の首の後ろに手を回した。

簡単すぎるのよ、全て。だってほら、もう和成と彼女の関係は崩れたでしょう?


これで和成はまた私に恋に落ちたわ。


0827
リクエストありがとうございました!ヒロインちゃんが酷いです。高尾も彼女いるのに酷い人になってます。歌詞が7割、イメージ3割のお話です。聞いたときに、これか、と思って書いてました。ヒロインちゃん→高尾です。でも高尾も彼女の方が好きだけど、なんだかんだでヒロインちゃんが好きっていうか、ほっとけないっていうか・・・。そんな感じの設定です。ぜひこれからも宜しくお願いします!

thanks!
ドミノ倒シ/すこっぷ様 feat.初音ミク