thanks | ナノ
「おい、おい、おーいっ!」


バンッ。りっちゃんが勢いよく扉を開いて部屋に入ってきた。
もう、せっかくのんびりしてたのにびっくりしちゃったじゃん。あー、よかった、お菓子も紅茶も無事だ。
ぱくり、と口の中にいれると甘い味が広がって、さすがムギちゃんが持ってくるお菓子だなあ、って思って幸せな気分。


「おい、おい、おいっ!」

「うるさい、律」

「い、いいか!落ち着いて聞けよ!?」


先輩が落ち着いて下さい。あずにゃんが言うと、ムギちゃんはりっちゃんに紅茶を出してあげた。ふんわりとおいしい匂いがする。紅茶を飲んだりっちゃんはホッと一息してすぐに名前ちゃんは部活に来てないのかを聞いてきた。
今日はね、用事があるからお休みだよ。ぱくり、またケーキを食べる。


「や、やっぱり…!」

「何がやっぱりなの?」

「あ、あのな…、窓から見えたんだけど…」


名前が男と待ち合わせしてた!りっちゃんが言った瞬間、みんなええっと言って立ち上がった。私も驚いて立ち上がっちゃった。ムギちゃんは目をキラキラと輝かせて、後をつけなきゃ!と言って、わたしも同意した。だって、気になるもん。みんなも頷いて、すぐに部室を出て、名前ちゃんが言った方向へと進んでいくと、少し背の高い男の人と名前ちゃんが並んで歩いていた。


「どうしますか、りっちゃんたいちょー!」

「このまま後をつけるぞ!」

「いいんですかね…」


名前ちゃんと男の人は、近くの喫茶店に入って行った。わたしたちも入ろう!ということで、少し近い席に座る。
なに注文しようかなー、とメニュー表を見ていると、隣に座っていたりっちゃんとあずにゃんが肩を叩いてきた。ちょっといたいよー、と二人に言うと、横、と言われて横を見ると、ニコニコと笑っている名前ちゃんが立っていた。


「何してるの?」

「え、あ…み、澪!」

「ええ!?あたしに振るなっ!えと、ムギ頼む!」

「あ、梓ちゃんタッチ、」

「う、えっと、唯先輩お願いします!」


とうとうわたしに回ってきて、名前ちゃんは不思議そうに首を傾げてわたしを見た。
ここは、私にかかってるんだ!よし、じゃあ、ここのお店に来てみたかったっていう理由にしよう!


「あ、あのね、名前ちゃんと彼氏さんが気になって……あ」

「あーあ、やっちゃった」

「唯、だからな…」

「この状況だもの、仕方ないわ」

「唯先輩に回した私が悪かったです…」


せっかく良い理由を見つけたのに、本当のこと言っちゃったよ…!名前ちゃんに怒られちゃう…。ビクビクとみんなが震えていると、え、と言って名前ちゃんは首を傾げた。


「彼氏じゃなくて、弟となら来てるけど…」

「や、やっぱり……え?おとう、と?」



カンチガイの尾行

なんだあ、わたしたちの勘違いだったんだねえ。あははと笑っていると、名前ちゃんも溜息をして、もっと考えなよと言って笑った。そのあとに戻ってきた弟さんは不思議そうな顔をしながらも丁寧に挨拶をしてくれて、その時に笑った顔が名前ちゃんにそっくりだった。

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すぅ汰さん、リクエストありがとうございました!一部始終をいれようと思ったら、こんなに長く…!これからも、よろしくお願いします。