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(拍手ログ)


突然チャイムが鳴って、開けてみると半泣きのお隣さんで幼なじみで、付き合って結構経つ彼女が立っていた。どうしたのかと聞いても寒いとしか答えず、とりあえず家へと招き入れて自分の部屋に連れて行った。部屋には祐希がベッドの上で横になって漫画を読んでいる。


「ふああ・・・、暖かい」

「・・・で、どうしたの。急に」

「あ、そうそう。私の家の暖房が壊れちゃったの!」


付けても冷たい風しかこない、と嘆いている。だから家に来たのか。あまりにもあっけない理由にはあと溜息をつくと、彼女にとってはそんな小さなことじゃないみたいで、手が冷たくなったの、と言いながら俺の頬にピッタリと両手をくっつけた。


「・・・ちょっと、冷たい」

「ごめん。でも、すっごく寒かったんだよ!」


ほら、と言いながら、今度は俺の手を取って自分の頬にくっつける。終いには、暖かいと言って離してくれず、ずっと自分の頬を温めていた。全く、この子は。
二度目の溜息をついて、もう片方の手も彼女の頬にくっつけると、あったかいと今にでも溶けて行きそうな声で言った。


「悠太の手あったかぁい・・・」

「あのさ、そんな声で言わないでくれるかな」


俺だって、仮にも男だよ。そんな可愛い顔で言われたら、我慢できなくなる。そう言って彼女を見つめると、途端に真っ赤になって、俺の手を掴んでいたのを急にパッと離した。そんな反応が可愛かったから、少し遊んであげようと思って、さっきの位置より少し前に進んで、彼女に近寄った。すると彼女は少し下がって、俺が近寄って、彼女が下がって…。そうしてとうとう、彼女の逃げ場がなくなった。
真っ赤な茹で凧みたいになった彼女に、キスの一つでもしちゃおうか、なんて考えて顔を近づけようとした時、背中が急に重くなった。


「・・・悠太のえっち。俺のこと忘れてたでしょ」

「ちょっと祐希、今いいところなんだけど」

「俺の目の前でイチャイチャするのは許しません」


はあ、と三度目の溜息をついて、目の前にいるであろう彼女に目を向けると、傍にあった棚に置いてある漫画を手にとって、面白そうな顔で真剣に読んでいた。



ちょっと危ない時間

ねえ、と言って彼女の手を掴むと、びくりと肩を震わせて俺の顔を見た途端また真っ赤になった。全く、そういうところが可愛いから、からかいたくなるのに。本日四度目の溜息を吐くと、まだ背中に乗っかっている祐希が、喉乾いたと言った。丁度良いタイミングで部屋の扉が開いて、母さんがジュースとお菓子を持って来て、隅で固まっている俺たちにくすりと小さな笑みを残して消えた。

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