thanks | ナノ


重たい扉を開けて中に入れば白い世界が広がる。そんな中に色が一つ映える。彼女は俺を見るなり優しく笑って、また来たんですか、と言った。顔とは違って辛辣な言葉を吐く彼女を気にせずに俺は、心配だからね、と笑った。本当に物好きですね、という彼女にそうだねと言えば、さっきよりも笑った。


「心配する必要なんか全然ないですよ」


ああ、まただ。そうやって嘘の笑顔を張り付けて、平気で嘘を吐く。そんなの全部嘘でできてるよ。俺にだけは、本当の君を見せてほしい・・・なんて、


下心なんてあるでしょう?



少し名前ちゃんの病室にいたけれど、途中で看護師さんと医者が来てそこを後にした。自分の家の扉の鍵を開けて中に入れば、病室とは違って色がある部屋が目の前に広がる。ここまで違うんだ、と毎日実感させられる。テレビをつけて、机の前に座れば疲労のせいか瞼が重くなっていった。

遠い意識の中聞こえる携帯の着信音でうっすらと開いた瞼。時計を見てみれば、1時を回っていて、こんな時間に電話してくる相手はあきらしかいない。面倒ながらも携帯を手に取って耳を当てるなり、女の人の焦るような声だ。早く来てください、と言うその女の人の声は、さっき名前ちゃんの病室にいた時に来た看護師さんの声だ。コートを手に取りすぐに向かった。


「・・・っあ、あの!名前ちゃんは、」


病室の前には看護師さんが出てきて、何とか耐えました、と言った。俺は病室へと入り、看護師さんは気を使ってなのかどこかへと消えていく。
顔色が凄く悪いのが分かる。そっと額に触れた時、ぴくりと動いた瞼。それから目が開いて名前ちゃんはまた来たんですか、といつも通り言った。俺は何も返せずに、ただ名前ちゃんの頭を撫でるだけ。


「頑張ったね」

「・・・子供扱いしないで下さい。こんなの、全然です」


余所を見る名前ちゃんの瞳は少し潤んでいるように見えて、もう一度頭を撫でた。こんな時でも名前ちゃんの親は来ない。そんなのは分かっていたけれど、やっぱりそれを目の当たりにするなんていうのは辛かった。俺が辛いんだ、そしたら名前ちゃんはもっと・・・。そこまで考えてやめた。そんな同情のようなものをされても、名前ちゃんは怒るだろう。バカにしないで下さい、って。
点滴のされていない方の手を握って、俺は思い切って言ってみた。一緒に向こうに行かない?と。驚いた顔をした名前ちゃんは、そんなの出来ません、と言うからどうして?と返した。だけど、それに対しての答えは用意していなかったようで、口をパクパクとして困った様子を見せる。別に困らせるつもりなんてなかったんだけどな。


「向こうの方なら治療がある」

「だ、だけど・・・」

「もう、嘘はいいよ。生きたいでしょ?」


いつもの名前ちゃんとは思えないほどの小さく、弱々しい声で生きたいと言った。初めて言った彼女の本音が嬉しくて、つい抱き締める。もう、名前ちゃんの親には話をつけてある。治療代とかは親が出すと言っていたけど、その後のことは知らないと言っていた。本当に、酷い親だと思うよ。だから、その分俺が彼女を愛してあげるんだ。

それで、幸せになるって決めたんだ。


0731
リクエストありがとうございました!刹那プラスいい曲ですね。聞いた時、惚れてしまいました。こーちゃんの口調があまり掴めていなくて、申し訳ないです・・・。これでの設定は、こーちゃんはヒロインの近所のお兄ちゃんです。先生やっていません。歌詞8割、イメージ2割くらいですね。最初はお医者さんと患者さんにしようと思ったんですが、いつの間にかこっちが完成していました(え)ぜひ、これからもよろしくお願いします!

thanks!
刹那プラス/みきとP様 feat.初音ミクAppend