プラスチック・ブルー | ナノ
家までの道のりで赤司に結果を報告すると彼は表情を一つも変えずに頷いた。やっぱり赤司の反応は私の予想通りで、私がわざわざ試合を見に行った意味はあるのだろうか、とか考えてしまって。
そういえば、黄瀬は黒子と仲直り出来たかな。赤色に染まる空をぼんやりと見上げながら考えていれば、隣を歩いていた赤司の足が止まった。振り返ってどうしたの、と声を掛けようかと思えば鋭い目で睨まれてしまって。

「お前が彼らに情をかけるのは構わない」
「な、に言ってるの…」
「だが、無暗に力を使ってしまうのを僕は許さないよ」
「そんなの、私の勝手じゃない…」

鋭い目から逃げるように目を逸らした。けれど赤司の優しい手が頬に触れて、思わずもう一度彼を見て目を離せなくなってしまって…。
やめて、触らないで、彼と同じで彼とは違う手で触らないで、彼と同じで彼と違う目で私を見ないで。心の奥が締め付けられて、苦しくて。息をすることも忘れてしまい、肩から落ちた鞄の音でやっと目を逸らすことが許された。はあっと大きな息を吐いて、吸って…。

「私にとって、…大切な友達だから、彼らは」
「彼らはそう思ってないかもしれない」
「そんなの知らない。ただ力になりたい、協力したい。…私のただのエゴよ」

伏せ目がちに赤司から目を逸らすように言ってしまえば、諦めたのか溜息をついて歩き出して。うん、大丈夫、大丈夫。ぎゅっと彼からの贈り物をそっと握りしめて赤司の後をついて行った。
その後からは会話なんてなくって、二人で黙って家までの道を歩いた。京都を来る時に親元を離れて一人暮らしを始めた私たちは同じマンションに住んでいて、もちろん赤司は最上階で、私は極力下の階に住んでいるけれど…。エレベーターから降りて、じゃあ…と赤司を見ると彼は微笑んで扉を閉めた。

「…苦しいなぁ、もう」

真っ暗な部屋でぽつりと呟いた言葉は闇に呑み込まれる。そんな闇の中で光った携帯には黄瀬からの着信で、口許に笑みが浮かぶ。黄瀬と話すとやっぱり元気が出るから、今のこの電話は助かったかもしれない。
もしもし、と耳を当てた先では楽しそうに黒子と仲直り出来たことを話す黄瀬がいて。目を閉じてしまえば、彼と会って話しているような気分になって、凄く幸せな気分になれた。

水中で息なんて出来ないよ


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