プラスチック・ブルー | ナノ
三回目のコールで緑間の声が聞こえて、鼓膜が揺れる。もしもし、と遠慮がちな言葉が私の口から出ると次に溜め息が聞こえて。

「なぜ帰ったのだよ」
「赤司が来て…」
「……お前は結果を知っていたのか」

少しの間があり、次の緑間の言葉にじわりじわりと汗が出て心臓が速くなる。
会場に行くまでは知らなかった。見ようとも思わなかった。見るつもりはなかった。言い訳のようにも聞こえる言葉を途切れ途切れに伝えて、少しずつ歪む景色に目を瞑った。
ああ、また嫌われた。卒業の時に緑間に言われた言葉が頭の中でぐるぐると回って、とうとう頬を涙が伝っていく。

「ごめ、っ」
「…昔からお前はズルいのだよ」
「……」
「俺は、」
「真ちゃーん、置いてくぞー」

緑間の言葉を遮るように明るい声が聞こえ、小さく溜め息を零す緑間を私は聞き逃さなかった。そっか、仲間がいるんだ。あの時のみんなのように、今は別の仲間がいる。
ふ、と軽くなる心に自然と頬が緩む。

「緑間、」
「…なんだ」
「緑間さ、卒業した後に私のこと嫌いって言ったの覚えてる?」
「…なんのことだ」
「酷いなぁ、私傷ついたのに。…あのね、私は緑間が好きだよ……たとえ嫌われてても」

じゃあね、と緑間の返事を聞くよりも先に電話を切った。すっと軽くなる心に浮かぶのは緑間との思い出。嫌いだって言ってたけど、一度だって酷くされたことなんてなかった。

電話を切った後に緑間が小さく本当にずるい女だ、と呟きチームメイトに顔が真っ赤だとからかわれていたことを、私が知るはずもなく。そっと開いたアルバムを眺めていた。

愛しい思い出をなぞって


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