プラスチック・ブルー | ナノ
湧き上がる会場に呑まれながらドキドキと高鳴る心臓を抑え込もうと深呼吸を何度もする。隣に座る黄瀬も息を止めるように黒子と緑間の試合を見ていた。
また緑間のスリーポイントが入りそうな時、火神くんが走り出し地から足が離れ後わずかで緑間のボールに手が届きそうな時ずきりと頭が痛む。

「美華っち…?まさか、」
「な、何にもないよ」
「何が見えたんスか…?」

何も見てないと首を振るのに黄瀬は聞いてくれなくて、手を掴まれてしまう。言えるわけない、黒子と青峰が戦っていたなんて、そんなの今の結果を告げるようなものだから。
揉める私と黄瀬に気づいた笠松さんは不思議そうに、見える見えないについてを聞いてきて、ひゅっと喉の奥が鳴った。黄瀬に何も言わず、逃げるようにして会場から飛び出た。

「美華」
「あ、赤司…」
「勝手な行動をするな」

会場の外には部活終わりらしき格好をした赤司が立っていて、真顔のまま近付いて来たかと思うとグイグイと腕を引かれる。会場がどんどん小さくなっていき、湧き上がる声すらも聞こえない。
沈黙のままの赤司に逆らおうにも圧倒的な力の差で敵うはずもなく、引きずられるように駅まで連れて行かれる。

「…で、何を見たんだ」
「…」
「美華」
「黒子と、青峰が…戦う、ところ」

私の言葉を聞いた途端、赤司は眉間にしわを寄せた後にふっと口角を上げて笑った。私はそんな彼から目が離せない。
何の笑み?予想通りの?それとも…。考えている途中で新幹線は来てしまい、連れられるように乗り込んだ。

夜、黒子から勝ったという報告と緑間くんが話したいと言ってました、という言葉と共に彼の電話番号が添付されたメールが届いた。
恐る恐るその文字をタップし、私の重たい心境とは正反対の軽快なコール音が耳の奥に響いた。

この迷宮から逃げ出せない


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