短い話 | ナノ
ドキドキと一歩近づくたびに心臓がうるさくなる。もうやだっ。でも、これ渡さないと、なぁ…。あ、そうだ。雫ちゃんに渡してもらおうかな、と思って探したけど、その雫ちゃんは見当たらなくて、なら、あさ子ちゃんに、と思ったけど、あさ子ちゃんもいなかった。ハルくんもいないし…。やっぱり、自分で渡さなきゃダメか…。最近はよく一緒にいるけど、佐々原くんとはあんまり喋らないからなぁ…。

「あ、あのっ、佐々原く、!」

どうしようっ。喉詰まっちゃって、最後まで言えなかったよ!だけど、佐々原くんは気付いてくれて、どうしたの、と下柳くんたちと話すのをやめて私を見た。その笑顔はやっぱり人懐っこい可愛らしい笑顔で、そんな笑顔を見ると顔に熱が集まってく。

「えと、こ、これ…!」
「俺に?誰から?」
「あの、野球部の…顧問の、先生に、」

あー、と言うとその紙を受け取ってありがとう、と笑った。はあー…、緊張した…。
じゃあ、と言って立ち去ろうとした時、佐々原くんは呼び止めてきて、また心臓がドキドキとうるさくなる。

「今日って、店長のところ行くの?」
「え、あ、うん。たぶん…」
「そっかー。ありがと、じゃあね!」
「う、うん」

佐々原くんは下柳くんたちとまた話しはじめて、教室に雫ちゃんたちも戻ってきて、傍に寄って行くと、雫ちゃんがササヤンくんと話したの、と聞いてきた。え、どうして雫ちゃん知ってるの、と返した。

「ササヤンくんの顔が赤いからよ」
「え?」
「ミッティ、しー!ダメですよ!」
「そうだぞシズク!デリカシーねぇなぁ!」

雫ちゃんに慌てた様子で言うあさ子ちゃんとハルくんが、私には不思議で、なんで佐々原くんの顔が赤くなるのが内緒なの、と返すと、三人とも驚いた顔をして私を見た。


気付かない恋心

ササヤンくんも大変ね、と言った雫ちゃんにあさ子ちゃんもハルくんも頷いて、私一人だけ置いてけぼり。名前ちゃんはササヤンくんのことどう思ってるんですか、なんて聞かれて、戸惑っちゃって近くにあった机にぶつかった。どこに驚いたのか分からないけど、そんな顔をしたあとに、あさ子ちゃんとハルくんはニコリと笑って青春ですね、とか呟いて遠くを見ていた。

0307
ササヤンが好きです!(きりっ)ヤマケンもハルもみっちゃんとか、シズクに夏目ちゃん…とにかくみんな好きです(きりりっ)