短い話 | ナノ
生徒会室で、今日中に仕上げなきゃいけない資料をまとめている時、扉が開いて、入って来たのは副会長の苗字先輩だった。手に大きな荷物を持っていて、俺と目が合うなり目を真ん丸にした。

「あれ、塚原いたの」
「いちゃ悪いですか」
「別にそんな事言ってないじゃん。もう、相変わらずだなあ」

よいしょ、と先輩は呟きながら俺の隣に荷物を置いた。そして、その隣に座りながらそういえばと俺に対して言ったから、資料に目を向けながらもなんですかと返事をした。
そして、先輩の口から出てきた言葉はあまりに以外なもので、ギャグでいう眼鏡がズレるほどだった。

「……はい?」
「いや、だからさ、千鶴たち4人がこれから来るから」

どうしてそんな話になるんだよ。ていうか、先輩はいつからアイツらと知り合いなんだよ。しかも、アイツらが来るとか、面倒になるだけじゃねえか。悠太や春はまだしも、問題児のサルとアホが来るってことは、生徒会室が破壊されるっていうのは、この先輩は分かってるのか。
じとっと先輩を見ていると、先輩は俺の視線には気付かず、ノックされた扉を開けに行った。

「名前せんぱーい!要っちいましたかー!」
「うん、いるよ。ほら」

先輩は難なくみんなを通してしまい、本当にどうするんだよ…なんて心の中で思っていると、あ、と大きな声を出したサルがごそごそと一枚の紙を出したらしい。そんなの気にしてられず、無視して資料を見ていると、これが要くんですよなんていう春の声が聞こえて、焦って立ち上がった拍子に椅子がガタンと倒れた。

「え、これが塚原?うっわ、不良だ」
「おいお前ら、何見てるんだよ」
「ふっふっふ。ゆっきーと優等生と不良設定で撮った時の写真さ!」

ふっふっふ、じゃねえだろ。その頭のやつ引っこ抜くぞ。
うわー、祐希くんかっこいいねーなんて言う先輩に、心の中でどうせ俺はかっこよくねえよなんて思って、倒れた椅子を戻してまた資料まとめに戻った。

「…うん、でもこの塚原もかっこいいね」

先輩の何気ない言葉に、なんだか胸がくすぐったくなった。俺の胸の中で、何かがはじけた気がした。

恋の実がはじけとぶ

もって言った!じゃあ、普段の要っちもかっこいいってことなんですか!なんていうサルの言葉に、無駄に反応をしてしまって、そうだよなんていう答えを期待してしまった。実際、返ってきたのは秘密なんて言って笑う先輩の声で、心のどこかで期待している俺がいる、なんて気付くのはまた後の話。

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