短い話 | ナノ
朝練に行く学校までの道のりで俺の大好きなあの子の姿を見つけ、すぐに飛びつかないで、って言われてるのにも関わらず、おはよう!と大きな声で挨拶をしながら後ろから抱き締めた。女の子らしい可愛い声を上げる名前ちゃんに顔がニヤけてしまう。慌てたように葉山くん!と声を荒げる名前ちゃんが可愛くて、今日も可愛いね、なんて自然と口から零れて。

「止めてっていつも言ってるのに…!」
「なんで?いいじゃん、別に!」
「は、恥ずかしいの!」

頬を赤くして、膨らませる名前ちゃん可愛いなぁ、なんて頬の緩みが止まらなくなる。今時こんな可愛い反応してくれる子なんて居ないから、凄く嬉しいしドキドキするんだよね。怒ったままの名前ちゃんの気を紛らわそうと、なんで今日は早いの、なんて別の話を振ってみれば、怒りは何処へ行ったのやら、ニッコリと笑って内緒、と人差し指を立てて。俺も特に気にせずに二人で他愛のない話をして優雅なひと時を過ごして朝練に向かう。


「今日からマネージャーをする苗字です。お願いします」

なのに、なのに、練習前のミーティングで現れたのは髪を一つに束ねて、いつも体育の時に着る体操服じゃなくて、ウェアーを着ていた。普段見たことない姿にドキドキしちゃって、口をパクパクと動かしてたらレオ姉が、本物のバカに見えるからやめなさい、って俺に呆れた顔を見せて。

「な、なんで、名前ちゃんいるの?!」
「…葉山くんのバスケが好きだから」

頬を赤らめて笑う名前ちゃんの言葉に俺もつられて赤くなって、ドキドキと心臓が煩い。俺が動けずにいれば赤司が、早く練習するぞ、と俺の元へ来て。わかった!と返事をして、目の前に立つ可愛い名前ちゃんに、俺のバスケ見ててね!って笑ってコートに駆け出した。

あの子の視線を独り占め
(名前ちゃーん!)
(あっ!葉山くん危ないよ!)
(っぶ…ちょっとレオ姉!)
(ちゃんと部活に集中しなさいよ)

0709