短い話 | ナノ
私の学校には、とてもかっこ良い双子がいます。その双子のお兄さんの、浅羽悠太くんは私と同じクラスの5組です。浅羽くんは、同じクラスの松岡春くんと4組の塚原要くんと転入してきたばかりの橘千鶴くんと仲良しらしいです。この情報は、友達から聞きました。
浅羽くん双子が学校に来ると、女の子たちが騒いでいて、私の友達も一緒に騒いでます。だけど、そういう騒ぐのとか苦手な私は席について読書中。
今日も学校では浅羽くんは人気で、みんなが目をハートにして見ている。

そして、昼休みになった。

飲み物を持ってくるのを忘れた私は、自動販売機でお茶を買おうと教室を出てその場へ向かった。ジュースにしようか、お茶にしようか迷って、弁当に合うのはやっぱりお茶かなと思ってお茶を買った。ガコン、とパックが落ちてきてそれを手に取る。

(桜がきれいだな…)

大きな桜の木は満開で、きれいなピンク色をしている。風が小さく吹くだけで桜が舞って、とてもきれい。
ぼーっとその桜を見たまま立っていると、後ろから苗字さん、と声を掛けられる。その声は紛れもなく浅羽くんの声で、心臓が大きく跳ねた。

「…桜、ついてるよ」
「え、あ、あの…っ、ありが…とう…!」

至近距離で見る浅羽くんは、本当にかっこよくて、きれいな顔をしていて…。私なんかが近くにいてもいいのかすら分からなくなる。そっと髪の毛に触れられて、その髪の毛の先から体全体が熱くなる。恥ずかしさで、この場にいてもいいのか分からなくなった私は、浅羽くんの傍を逃げるように離れた。

「悠太ー、早く弁当食べようよ」
「…あ、うん」
「あ、悠太と同じクラスの…えっと、苗字さんだったけ」
「…あ、うん」
「……ゆうたー?」

走れ青春

昼休みが終わる予鈴が鳴ると、浅羽くんは松岡くんと一緒に戻ってきて、友達が戻って来たよなんて言って私の腕をぐいぐい引っ張るものだから、そっちを見てしまって目が合った。一瞬時間が止まったんじゃないかって思うほど、回りが静かに感じて顔に熱が集まって、顔を逸らした。遠くで、松岡くんが悠太くん顔が赤いですけど、大丈夫ですかという声が聞こえたような気がした。

111030