短い話 | ナノ
冷たくなった指先に、自分の息を吹きかける。ほんのりと暖かな白い息に、ぎゅっと指先に力を入れて空を見上げれば、綺麗な星空が広がっている。冬の夜空は澄んでいて、キラキラと輝く星がよく見えて。綺麗だな、と余韻に浸っていると、ぴとりと頬にくっついた温かいもの。自分が冷えていたせいか、一瞬で熱く感じて驚いて声を上げて振り替えれば、温かい飲み物を買いに行ってくれた高尾くんだった。

「缶しかなかったけど、いい?」
「うん。ありがとう」

歯を見せて、人の良い可愛らしい笑みを見せる高尾くんの手から自分の飲み物を取ろうとすれば、缶特有の音をさせながら開けてくれた。缶を開けるのが苦手な私を分かってくれているのか、その何気ない優しさに嬉しくなって心が温まっていく。
冷えていた手は暖かくなって、体の奥からも温まる感覚にほっと一息吐いた。隣に座る高尾くんを見てみれば、可愛いチョイスのココアで。そういえば、コーヒーは苦いからあまり好きじゃないって言ってた気がするなぁ、と。

「どったの。飲みたい?」

見られていたのに気付いて、そのココアを差し出してくれた。私のコーンポタージュもいるかと差し出して、二人で一度交換をした。コーンポタージュとはまた違う甘さがふんわりと口の中に広がる。

「間接キスだ」
「えっ」

悪戯が成功した、みたいに笑う高尾くんの言葉が一瞬分からなかったけど、理解すると熱くなってしまう。冷たい風が頬を撫でるけど、熱が冷めない。さっきまでは寒いと思っていたはずが、今は熱く感じて。両頬を抑えて、目を合わせないようにと前を向く。羞恥で顔は熱くなるし、何にも考えられない。頭が真っ白っていうのは、こういうことを言うみたいで、徐々に私の頭の中を高尾くんが占領していく。

「顔赤いよ」
「だ、だって、それは…」
「鼻も真っ赤ー」

ふに、と鼻先を突かれて、パチリと高尾くんと目が合う。収まっていたはずの熱が、また戻ってきて熱くなって。恥ずかしくて目を瞑れば、そっと自分の鼻から高尾くんの手が離れていって、もう大丈夫かなと目を開けようとすれば、さらりと前髪を避けられて気配が近づいてくる。ドキドキと私の心臓は煩く高鳴る。

「そんな無防備だと、ちゅーしちゃうよ」

きゅっと摘まれた鼻に驚いて目を開ければ、少しだけ顔を赤くした高尾くんが怒った顔をしていた。しても良かったのに、なんて言ったら怒られそうだから言えないけど。少しだけガッカリした自分を誤魔化そうとすれば、ちゅっと小さなリップ音が聞こえる。ぱちぱちと、高尾くんが私の鼻先へキスしたことに驚いた顔をしていると、今はこれで我慢してね、とふにゃりと笑って高尾くんは人差し指で私の唇に振れて、また今度に取っておこうね、なんて言った。

赤い鼻先へやさしいキスを

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